飯豊川 大ヤット沢

17日:曇時々晴

赤谷林道は山崩れがあったため7月26日から通行止めになっている。しかし、徒歩で通過できないはずはないので構わず予定を決行した。

加治川治水ダムは手前の駐車場の先で立ち入り禁止になっている。管理棟に一番近いスペースに車を停めて、8時過ぎという異例の遅さで出発する。虻が群がってくるが、あまり暑くないので防虫ネットと軍手を着用して虻の猛攻を防ぐのも苦ではない。山崩れは大倉沢に架かる橋のすぐ手前で起きていた。崩落個所は二カ所あり、大規模なのは斜面に向かって左側が、尾根付近から崩れて土石の流路がルンゼ状に刻まれていた。次第にまとわりつく虻も減ってくる。林道終点から岩越平まで登山道を辿り、釣師の踏跡からガレの堆積した斜面を下降して大ヤット沢出合に立った。

大ヤット沢出合

出合のやや上流を徒渉して大ヤット沢に入渓する。出合付近はさらさらと流れる穏やかな渓相だ。沢が右へ左へと曲がっていくと、大釜を抱えた3M滝が懸る。落差に似合わずかなりの迫力があるが、一見してルートは左側と分かる。河原が続くが次第に転石が大きくなってきて、巨岩のゴーロ帯となる。岩は大きいし、水流付近はヌメるし、結構苦労して越えた。瀞が続くゴルジュを抜けると穏やかな河原状になるが、すぐにゴルジュとなり屈曲した壁から5M滝が姿を現す。釜の手前で右岸のルンゼを登って滝を巻くと、また河原状となる。しばらく河原状を進み、深い淵となったゴルジュの右岸を巻くと間もなく上の沢が(1:5)で出合う。

出合付近の渓相
大釜の3M滝
巨岩が多くなってきた
ゴルジュ入口
ゴルジュに懸る5M 豪瀑

しばらく河原が続くが、3M滝が懸るゴルジュから滝が続く。左岸の砂斜面をアイスハンマーを使って3M滝を越えると4条の水流となった4×8Mが続く。次の15×20は基部に深い釜を持ち、泳いで取付いて左壁を登るか左岸の悪そうな壁を登って巻くか考えた末、天気が良くないことを理由に高巻を選択したが、結構悪かった。空身で登るものの、灌木の間隔が開いている上に登ってもなかなか斜度が落ちてこない。荷揚げではちょっとした岩角にザックが引っかかり、懸垂で外しに降りる羽目になった。単独行での荷揚げはなかなかうまくいかないものだが、いい方法を考えなくてはなるまい。斜度が緩そうなところを下降すると、釜を持った8M直瀑の上に出た。

河原が続き・・・と書いたがゴルジュでもある
開けた河原
滝場に差し掛かる
滝場の中の3番目の滝15×20

遡行を再開すると、左岸から二本、右岸から二本の支流が立て続けに入ってくる。このうち最後に入ってくる右岸の沢が下の沢である。この付近はブッシュに隠れた台地や河原が点在するが、下の沢出合から20Mほど降った砂地を幕場とした。近くに水が湧いており、増水時に避難できる台地もある。翌朝は雨の予報なので、念のため台地の邪魔なブッシュを刈っておいた。

滝場を過ぎて左岸から二本目、(3:1)の枝沢
泊まり場に選んだ砂地

18日:雨のち曇

未明より雨が降り出し、明け方にはかなり強くなった。テントを張った砂地は平水時の水面から60cmくらいの高さがあったが、いつの間にかあと数センチのところまで水面が迫ってきた。テント内でザックにまとめておいた荷物を背負い、急いでテントを高台に移動した。雨は昼前から小降りになり、昼過ぎには止んだ。結局元の幕場の砂地はぎりぎり浸水しなかったものの、幕場をこの場所に選んで正解だった。

増水は続き、水はチョコレート色に濁っている。この日は枝沢周遊の予定を取りやめて停滞を決め込んだが、午後晴れ間が出てきて水も引いてきたので、下の沢に散策に出かけた。しかし、ゆっくりと30分も歩くと崩壊した雪渓で形成された不安定なブリッジに行き当たったので、あっさりと引き返した。

下の沢
下の沢8M2段
下の沢 左岸崩落個所
下の沢 スノーブロック
下の沢 スノーブリッジ

19日:曇時々雨

下の沢を分けると、ゴルジュとなる。左岸が切り立った岩壁で、右岸はブッシュが後退した泥混じりの壁である。ゴルジュは下の沢出合からほぼまっすぐに続き、やがて左に屈曲する。屈曲点には崩壊した雪渓の破片が散らばっており、7M滝が懸る。左壁を登るとすぐに12M樋状の滝が続いており、引き続き左側を巻き気味に登る。さらに8M3段、6Mと続いているのが見えたので、落口には降りずそのまま高巻いて6M滝の上に出た。そこはちょうど二俣になっており、右俣にはさらに2Mと8Mの滝が続き、左俣には2Mと6Mの滝が続いている。

下の沢出合の先のゴルジュ
7M滝
12M樋状の滝
8M3段と6Mの滝
右俣の2Mと8Mの滝
左俣の2Mと6Mの滝

進む左俣の6Mは登れないと見て、中間尾根に取付いて高巻くことにした。ここも上部に滝が続いている。斜度が緩くなった所で下降すると、幾つかの滝を過ぎた辺りに出たようだ。沢に戻ったのも束の間で、すぐに狭いゴルジュとなって抉れた両壁の間に2M~4Mの滝が続く。三つの滝を越えたものの連続するCS滝に阻まれて敢え無く引き返して、ゴルジュ入口から再び左岸を高巻くことになる。

出合の滝の上にも滝が続く
沢に降りた直後のゴルジュ入口
滝を越えてゴルジュを遡行する
ゴルジュの遡行を阻んだCS滝

ゴルジュを巻いて沢に戻ると、まもなく右岸に(1:2)で枝沢を分ける。ちょっと興味があった沢床との高度差が10M前後の中間尾根を過ぎると(2:1)で左岸に枝沢を分ける。前述の中間尾根は幕場にできるかもと期待していたが、倒木で荒れた藪でとても幕場にできるようなところではなかった。本流を進んで4本の滝を越えると、小スラブ帯となって7×8と8Mの滝が懸る。左岸尾根に上がって巻き、沢の屈曲点1050M付近で沢床に戻った。

左岸は沢床と標高差が少ない右股との中間尾根
7×8と8Mの滝
8M滝 引き返して高巻く

しばらく平凡なゴーロ状の沢となり平穏に詰め上がれるかと思ったが、小ゴルジュに滝が続き、それを越えると(1:2)で分かれ水流の多い右沢には面倒そうな滝が三つ続いているのが見えた。しかし地形図からも斜度からも本流は左で、水量乏しい左の沢へと進んだ。ほとんど水は涸れそうだが、ぽつぽつとのっぺりした5M前後の滝が懸り、次第に岩盤上に水溜りのような小釜と小滝が続くようになる。笹のトンネルができ始めると間もなく窪がなくなり、左岸の笹とブッシュを掻き分けると尾根に出た。

ゴーロ状の平凡な渓相
小ゴルジュ懸る滝
源頭部の苔生した岩盤と草付
振り返ると穴が開いたスラブのピークが見えた

尾根上はなかなか手ごわい藪が続き、やがて烏帽子山と北峰の間の尾根に合流する。幾分藪が薄い所や踏跡らしきものも見受けられる中、北峰の中間あたりまで藪を漕いで、ほうじょう沢左俣へと下降した。

このピークを目指して藪尾根を進む

ほうじょう沢左俣の源頭部は、さっき詰めてきた大ヤット沢とそっくりな渓相である。のっぺりした岩盤の流れは下降となると厄介である。少し落差の大きな滝がでてきたところで左岸の尾根を下降して、二俣付近でルンゼを経由して右俣に出た。二俣過ぎまで平凡な流れが続き、滝が懸っている1250Mでオーサンカイ尾根(左岸)にあがった。尾根はしばらく藪続きだったので、もう少し沢を下降した方が良かったかもしれない。

ほうじょう沢

尾根には次第に踏跡が出てくるが、次第に暗くなってきて地図も踏跡も識別するのが難しくなってくる。18:20頃1100M付近で、幾分開けたところを刈りはらってテントを張り夜を明かすことにした。設営中蚋の多さに閉口した。衣類はずぶ濡れで、予備のアンダーに着替えて就寝したが、意外に暖かく快眠できた。

20日:曇時々晴

防虫ネットを被ってテントを撤収し、下降を再開する。約2時間半で尾根の末端に降り大ヤット沢出合に戻った。

泊まり場付近
尾根末端付近から見下ろした飯豊川

往路と同じところを徒渉して岩越平に登り、蕨を採りながら加治川治水ダムへ向かった。

本流徒渉点

 

遡行図

山行最終日:2017年8月20日
メンバー:長島
山域: 飯豊連峰 加治川
山行形態: 沢登り
コースタイム:
17日:加治川治水ダム(8:15)-大ヤット沢出合(10:55)-上の沢出合(13:45)-下の沢出合(16:20)
18日:下の沢散策(14:10~15:25)
19日:下の沢出合(6:00)-二俣(6:50)-950M(8:40)-1050M(9:45)-烏帽子山北峰(13:55)-ほうじょう沢1280M二俣(15:30)-オーサンカイ尾根1100M付近(18:20)
20日:オーサンカイ尾根1100M付近(5:30)-大ヤット沢出合(8:05)-加治川治水ダム(12:00)
地形図:二王子岳・蒜場山
報告者:長島