今回訪れた小面峰を取り巻く小さな沢は、7月に実施した淀ノ沢~大面沢の計画に小面沢を取り入れて以来気になっていた。何度かルートの一端に加えていたが、予報された天気が芳しくなく山行当日にカットしたため、今回ようやく足を踏み入れることができた。
9月30日(雨のち曇)
天気予報では未明に小雨が報じられていたが、林道ゲート前に到着すると結構な雨が降り始める。車の中で小一時間小降りになるのを待って、深沢の大堰堤上の入渓点に向かって林道を歩き始めた。
林道が左にカーブして斜度を増す手前で、踏跡を辿って深沢の河原に出る。7月に訪れた時と比べると、水深は10cm以上浅く水勢も弱く感じられた。既に二度遡行して勝手が分かっている上に、水量が少ないとなれば気楽なものだ。7月に泳いだゴルジュの淵は足を浮かせて右壁をへつったが、それ以外はほぼ膝上を濡らすことなく遡行できる。出発から二時間強でオウトウ沢出合に到達する。
オウトウ沢に入って最初の連瀑とその先の滝までは7月に遡行して勝手がわかっているため、一気に右岸を巻いて前回引き返した滝の上に降りた。滝上も出合と同様に側壁は高くはないがゴルジュが続いている。小さな落込みを越えていくとすぐに二俣に出た。水量比はほぼ(1:1)である。
右俣を分けると2M前後の滝が5本続き、直登したり小さく巻いたりして越えていくと、ゴルジュを抜けて開けてくる。左岸に小滝を懸けて出合う枝沢を分けると、2~6Mの滝がぽつぽつと懸っており、いずれも直登して越えるが枝沢を分けてから二本目の滝6Mを左から越えるのが幾分難し目だっただろうか。
15mのナメを過ぎると右岸の枝沢が倒木おびただしいガレの先に15Mくらいの滝を懸けている。本流はゴーロ帯になるかのように見えたが4MCSが越えられず右岸のブッシュ帯に取付く。4MCSに続く三つの滝もまとめて巻いて懸垂で沢に戻る。ブッシュが沢床まで達している箇所は限られているため、高巻きの取付き点は見つけやすいが、下降点の見極めにはなかなか苦労する。
沢に戻ると平凡な河原状となる。しばらく淡々と歩いていくと、草付の壁を抉ったような黒い末広がりの壁の中央を白い一条の筋となって流れ落ち、中段でくの字に折れて末広がりに拡散している12M滝が目に入る。滝身は逆相で滑っていそうで、直登は困難、高巻きは一見すると左右どちらも大高巻きになりそうだが、よく見ると右岸草付に浅いルンゼがあって何とかルートになりそうである。下部に近づいてみると結構ホールドがしっかりしており、上部は斜度が緩くなるうえにブッシュも散見されるので、ロープを引いて途中二カ所で灌木に支点を取って滝頭を見下ろせる所で後続を確保した。上部には2~3Mの滝が続いており、確保した場所からはブッシュが続いているので、そのままブッシュ帯を伝って巻き続けてこれらの滝の上に降りた。
滝下とは渓相が一転して両岸草付となる。倒木が詰まった小ゴルジュを抜けると、右岸に開けた草付交じりのガレが広がり、正面に12M滝が懸る。今度の12M滝も左岸は絶壁である。右岸の壁際のブッシュ帯を伝って10Mほど斜度を上げて、上部は滝頭に向かって斜上するように短いバンドを繋げて落口に立った。
12M滝を越えると、草付のV字谷となっておりナメ状の小滝が続く。次第に斜度を増して滝の規模も大きくなり、スラブ状の滝の連瀑となる。水が涸れても草付交じりのスラブが続き最後まで息が抜けない。ようやくスラブ帯を脱してブッシュ帯に取付き稜線に立った時、既に16時半を過ぎていた。
計画段階では小面峰の北側に詰め上がると予想していたが、実際に詰め上がったところは小面峰の西側、オウトウ沢の源頭だった。しかしこの時点ではひたすらスラブ帯を詰めてきたうえにガスが立ち込めて視界が効かなかったため正確な位置を把握していなかった。尤もオウトウ沢源頭だと分かってもルートを修正する程の余裕のある時間ではなく、何とか幕場にできる場所を得られるところまで下降することが最優先である。
詰め上がった尾根の反対側へ下降していくと、すぐに石が敷き詰まった窪に出で、ひたすら平凡な久保を降る。ようやく水が流れ始めた辺りで2.5M四方くらいに石と。砂が堆積しているところを見つけたため、そこを整地してテントを張った。
10月1日(曇時々晴)
下降を開始しても相変わらず伏流を繰り返す平凡なゴーロが続く。一夜明けて視界が晴れたため、右岸左岸の様子や沢筋の曲がりが確認でき、オウトウ沢を下降していることが明らかになる。登り返しを予定している335Mまでこのままゴーロが続くことを期待したが、ゴルジュにこそなっていないものの2~10Mの滝がぽつぽつと懸っており、下降するにも時間がかかる。クライムダウンできない滝も多く、支点にできそうな倒木や大石を見繕ってロープをかけていくが、灌木しかないところもあって捨て縄2本を消費した。登り返す枝沢の出合までに懸っていた滝は、14本と小滝の連瀑帯で、懸垂下降5回、高巻き3回を要した。
335Mの枝沢はほとんど涸沢と言ってよく、ほとんど水流はない。出合からゴーロ状で、8Mの簡単な枯棚が懸る程度でなので、淡々と登り続ける。600M付近から右岸に分かれる枝沢へ進路を取って尾根の反対側から尾根に食い込むように伸びている綱木俣沢右俣の源頭付近を目指す。幸運にも最後まで大した藪になることなく尾根に詰め上がった。
尾根からブッシュ伝いに急斜面を下降して、綱木俣沢右俣の右岸から源頭部に降り立った。源頭部は林の中の窪といった感じの長閑な光景だが、これまでの行程からこの一帯の沢は地形図を素直に解釈できるところではないように思われた。このまま右俣を下降していくとやっかいな滝がいくつか懸っていてかなり時間が懸りそうだったので、三俣になっている435M付近まで左岸の尾根を下降することにした。
左岸の灌木を縫ってトラバース気味に幾分高度を上げていくと尾根に出る。尾根は直立する五葉松やブナの樹々が目印になっており、藪も濃くない。尾根を下降ルートにとって少なくとも間違ってはいなかったようだが、右俣の渓相が見れなかったことが気にならないとは言えない。
降り立った三俣は穏やかな渓相だったが、すぐに滝場となり左岸の巻きとなって懸垂25Mで沢に戻る。この沢も平坦な河原状の流れと滝場が交互に現れ、滝場では巻きか懸垂下降を強いられて、二俣まで水平距離で500Mもないにもかかわらず一時間もかかってしまった。
二俣からは往路を戻るので勝手は分かっており、緊迫感から解放される。所要時間もほぼ正確に予想でき、ほぼその通りに林道ゲートに辿り着いた。
9月30日:林道ゲート(7:40)-田代沢出合(8;45)-オウトウ沢出合(9:55)-二俣(10:25)-485M(12:15)-小面峰西のコル(16:35)-オウトウ沢915M(17:35)
10月1日:幕場(7:00)-335M枝沢出合(10:15)-1004/845ピーク間のコル(12:20)-綱木俣沢右俣430M三俣(13:45)-二俣(14:45)-林道ゲート(17:00)