胎内川西俣沢右俣(千石沢右俣下降~金尻沢)

今回は赤津山からアプローチして万石沢と千石沢を遡下行する予定だったが、赤津山までかなり時間を費やしてしまったことに加えて、赤津山山頂からのヤブでさらに時間を喰いそうだったため、千石沢を下降して金尻沢を遡行して手早く赤津山に戻る計画に変更した。

19日:

今回初めて加治川流域からのアプローチとなるが、胎内川と比べて下流域から険しい印象を受ける。林道から見下ろした飯豊川の水流は、前々日の雨の影響があってかどうかは分からないが相当な水量で、蟹沢や都沢などどうやって入渓すればよいのか・・・悩みの種ができてしまった。

四郎左エ門沢を渡ると間もなくブナの幹にピンクのペインティングで目印が付けられた登山道入口が目に入る。出だしの急登に加えて、疲れがたまってきているせいもあって、きつい登り道が続く。概して登山道としては歩きやすいとは言えないが、赤津山山頂までは明瞭な道が付いている。山頂からは残雪期に歩かれているようだが、無雪期は完全に藪となっていて踏跡は見当たらない。蔓が絡まった潅木を避けるように降って行き、金尻沢と千石沢を分ける尾根を過ぎたことを確認して適当な窪を下降する。

千石沢上流部は平凡なゴーロ

枯棚を二つ過ぎるとようやく水が流れ始め、1150M付近で遅い昼食を取った。下降を再開して、1100M付近の湧水帯を過ぎるとだいぶ沢らしい水量になり、980Mと910Mでそれぞれ(1:1)で右岸からの流れを併せるまで、単調なゴーロが続く。

右岸を巻いて20M滝を振り返る

ぼちぼち滝が出始めて、釜を持った4Mと2Mをまとめて右岸のブッシュ帯から小さく巻くと、小ゴルジュといった渓相になって2M滝が懸かる。流れは蛇行して、次の4M滝の下降が難しく右岸から高巻くと、さらに滝が続いており滝の切れ目の河原に懸垂下降した。振り返ると、上流側から20M、2Mの滝が懸かっていた。

滝場では巻きと懸垂下降が続く

割と左右対称に水流から岩が突き出した5Mの滝を左岸の草付凹核から下降し、さらに釜を持った2M滝を下降したところで3M滝が続くが、難しそうなので右岸から高巻くことにする。

千石沢の核心部 右岸を巻いた

樹林が沢床まで届いてそうなところを見繕って降ってみるが、沢床はさらに低くなっており滝が続いていそうなので、さらに高巻を続け、下流方面に河原が見えたところで懸垂で沢床に戻った。下降地点から上流を見渡すと、三連瀑とその上に左から滝の水流だけが見えていた。ここから二つの滝を下降して左に折れると金尻沢との二俣に出た。

二俣の先で5Mの滝を左岸の台地状の斜面から巻くと、三連の小滝と釜が続く。上段の小滝の右岸寄りを下降したが、その下はかなり濡れそうだったので、戻って右岸から巻くことにした。一旦三連小滝の下に下降したが、落差のある滝が続いており、手頃な支点が見当たらなかったので、再び右岸に取り付いて巻く。巻きながらも沢を見下ろすが、降っているにもかかわらず一段と沢床からの高度が増しているように見えた。このとき時刻は17時を回っており、高巻きの途中でヘッドライトを燈した。位置的には三俣はもうすぐのはずだが、下手に下降して登り返すわけにもいかなくなってきたので、一旦中俣と右俣を分ける尾根に乗ったことを確認してから右俣に向けて下降した。下降地点は三俣から右俣に20Mくらい入ったところだった。

三俣から10分程下降して、8月に泊まった小石の平坦な台地にテントを張った。9月の台風で流されてはいないかと多少心配していたが、整地した痕跡も含めて8月に泊まったときのままの快適な幕場だった。

20日:

夜は晴れていたが、明け方から雨が降り始める。テントの中で食事を摂った後、撤収して三俣へ向かった。

前日は右岸を巻いた18M 左岸を巻くが悪い

三俣から右俣に入って、昨日懸垂下降したところを通り過ぎると、釜を二つ過ぎたところで18Mの大滝が懸かっている。右壁に大きなブロック状の段差があって登れるかに見えたが、幾分外傾しているのと段差が大きいのとで、左岸のルンゼから巻くことにした。ルンゼは登るにつれて急になってきて、露岩部に何とかフリクションが得られる程度のスタンスを拾って潅木を掴めるところまで登って、左側のテラスに辿り着いた。テラスから後続にロープを投げたので、登る方向とロープを引く方向が食い違ってしまい、堀尾さんには苦労させてしまった。この場合はテラスで自己確保を取った後、ルンゼ上部で最初に掴んだブッシュに支点を作ってロープを出すべきであった。テラスからはブッシュ伝いに問題なく進んで、18M滝上部に続く6×8のZ字状ナメ滝の落口に出た。

高巻きに続いて8M滝右壁を登る

その先にはすぐに8Mの滝が懸かっているが、右壁を簡単に登れた。落口の先には三連の小滝と釜が続いており、ちょうど昨日高巻いたところだと分かった。この日は釜に腰辺りまで使って小滝を登って突破した。続く5M滝を昨日同様左岸から巻くと間もなく二俣に着いた。

5MCS滝 下部はしぶきを浴びて右側を登る

二俣からしばらく平凡な河原となるが、流れが左にカーブしていくと滝が連続して懸かっている。小滝を越えて、釜つきの4M滝を小さく巻くと、両岸の隙間いっぱいに水流を落とす4連瀑となっている。突っ込んでいけば全身濡れるのは必至なので、右岸から巻くことにする。割と緩い斜面をブッシュ伝いに登り、残置シュリンゲがあった潅木を支点に(根元付近に直掛け)懸垂で沢床に戻った。ここからは河原が続き、いくつかの滝が懸かるが特に問題となるところも無いが、5MCS滝はやや難しいムーブで右壁手前から巻気味に登るか、シャワーを浴びて水流右際を登るか迷うところだ。

奥の二俣(1020M)は左又へ進むが、河原続きの右又に対して、左又は6Mの滝が二つ続いている。右岸草付斜面をブッシュ帯に取り付いて、出合の二つの6M滝を巻くと、源頭まで急傾斜だが平凡な流れが続く。稜線下150M辺りで湧水があり、ここで水流は消える。詰めはブッシュを掴む急登だが、藪漕ぎ無しに稜線に出る。稜線は昨日も通過した藪尾根で、赤津山山頂まで15分くらい藪を漕いで進んだ。

山頂からは雨でよく滑る登山道を慎重に降って、林道まで3時間20分、さらに林道を辿って加治川治水ダムまでは1時間25分で下山した。17時45分に駐車場に着いた時には、既に暗くなっていた。荷物の整理は後回しにして、靴を履き替え、ハーネスをはずす程度の支度で切りあげて、早々に車を走らせて「あやめの湯」へ向かった。

 

同行者の記録

遡行図

山行最終日:2013年10月20日
メンバー:長島(L) 堀尾
山域: 飯豊連峰 胎内川
山行形態: 沢登り
コースタイム:
19日:加治川治水ダム(7:00)-巡視路口(8:30)-西ノ峰(11:25)-赤津山(12:15)-千石沢1150M付近(13:45)-二俣970M(14:55)-金尻沢出合(16:50)-三俣の下流の台地(18:00)
20日:三俣の下流の台地(6:30)-二俣850M(9:35)-稜線(12:05)-赤津山(12:45)-西ノ峰(14:05)-加治川林道(16:20)-加治川治水ダム(17:35)
地形図:二王子岳
報告者:長島