胎内川鱒谷~西俣川~こつぶり沢左俣-鳥坂沢

雨が降ったり止んだりのあいにくの天気。前夜、土砂降りの雨が降ったこともあり、胎内川は増水していた。奥胎内ヒュッテに着き、増水の程度を確かめたが、黒石沢も増水しており、楢ノ木沢もかなり増水していると思われるため、当初の堂沢の計画を変更し、飯豊前衛の沢へ転進した。8時に益谷橋に着いたのだが、準備を始めているとザーッと雨が降り出した。しばらく車で雨宿りをしてから、沢の身支度を整え、益谷橋を出発したのは8:40だった。橋から鱒谷沢までは急斜面をブッシュを掴みながら下降した。8分後、入渓。沢は深くなく、両岸とも稜線が近くに見える。沢の規模は小さいのだが、岩が雪に磨かれていて、2m程度の滝でも登るのに苦労する。2m、2m、3段2m、2mと小滝が続くが、いずれもワ
ンポイント難しいところがあり、足の置き場、手の置き場を慎重に選んだ。大きなガバがなく、小さな窪みしか手が置けない場面があった。長島さんから、指の力に強度を与えるために人差指に親指を添えるようにアドバイスを受けた。こういうことは実践でないと分からないものだと目から鱗だった。続く2段6mの滝はトラバース気味に巻いてから懸垂で降りた。前衛でも飯豊は飯豊。なかなか楽はさせてくれない。長島さんがポツリと「しょぼくても飯豊」とつぶやいた。その後も小滝を慎重に登りながら先に進んだ(3m、2段3m)。この日最大の滝である6mの滝が現れた。ここはロープを出し、長島さんが空荷で登った。長島さんはピンを取ることもなく、フリーソロで登っていく。下から見ていると、ツルツルの岩が濡れていて黒く光っている。いかにも滑りそうだ。こんなところをよくフリーで登るなぁと思わず、関心してしまった。内心、ヒアヒアしながら見ていたのだが、長島さんは危なげなく登りきった。長島さんのザックを荷揚げしてから、俺の番だ。ロープで確保されているというのは、なんとありがたいことだろう。まるで緊張感が違う。長島さんに感謝しながら登った。このあとは、再び小滝が続いた(2m、2段3m、2m)。奥の二俣を左に入る予定だったのが、2度入るところを間違えた。左に入ってから地図と沢の方向が合わない。3度目の正直で、本来の左俣に入った。地図読みの難しさを痛感した。左俣を入ったところで昼食を取った(12:40)。小滝の連瀑帯を抜け、詰めに入り、13:50に尾根に出た。

西俣川の枝沢を下降に選んだ。地図で見ると短い沢なのだが、降りるのになかなか苦労した。3段8mの滝は左から巻き、2段6mの滝は右から巻いた。その後の3m、4m、6mの滝はそれぞれ懸垂で降りた。西俣川本流に出たのは16:03。枝沢の下降に2時間強費やした。

西俣川本流は途中、ゴルジュになっている。川幅が狭まっているところでは、かなりの水流だ。一箇所、対岸に飛び移るところがあった。対岸の岩質は例のごとく、ツルツルである。もし滑って、本流に落ちると、釜まで流され、激流にもみくちゃにされること間違え無し。俺的にはかなり緊張しているのだが、長島さんは釣りきち三平のように軽々と飛び越え、何事もなかったように先に進んでいく。後ろを振返りもしないので、長島さんとしては、たいしたことのない場面なのだろう。俺にとっては、西俣川最大の核心部。勇気を振り絞り、飛んだ。ザックが左に振られて、ちょっと体勢を崩す。ヒアリとしたが、立て直し、無事の生還。長島さん、俺は長島さんが知らないところで、頑張っているんですよ。

西俣川を下降していると、ところどころ岩魚が走る。長島さんが竿を出して、釣り下ったのだが、釣れなかった。やはり下降しながら釣るのは難しいのだろう。竿をしまって、先を急いだ。

こつぶり沢に入ると3m、6mの滝が出てくる。6mの滝は右から巻いた。ロープが残置してあった。ときどき人が入るようである。少し進むと左に川原が見えてくる。本日のテン場だ。1泊2日の山行でテン場に着くのが18時。正直、疲れました。

翌日、テン場を7:15に出発。こつぶり沢は3~4mの簡単な小滝しか出てこず、名前の通り「こつぶ」な沢でした。しかし、こつぶり沢の核心は沢にあらず。急斜面の長い長いツメが待っていました。ブッシュを掴みながら、尾根を目指します。行けども行けども尾根に辿り着きません。大きな木が見えたので、「あそこが稜線か!」と思ったのですが、考えが甘かった。豪雪地帯の木は、根元から曲がり、急斜面にしがみついているのです。やっと目標の木まで辿り着いても稜線ははるか天空にあるのでした。やっとの思いで尾根に出て、休憩しようとしていると、長島さんから 「休憩しないよ」の一言。長島さんは鬼だと思いました。

尾根の踏み跡を辿って、鳥坂峰へ。ここから鳥坂沢の下降に入ります。2m滝を懸垂、続く2段5mはクライムダウン、6m滝は左から巻き、2段8m滝はトラバース気味に巻いてから懸垂しました。途中に2~3mほどの滝が多く出てきますが、慎重に手と足を選びながら、クライムダウンできます。しかし、クライムダウンもルートの選択肢が少なく、一筋縄にはいかない。「しょぼくても飯豊」なのであります。ようやく鳥坂橋が見えてきました。しかし、橋は崖の上です。崖の下部は草つき、どうしようと途方に暮れるところでしたが、長島さんが岩盤沿いのルートを開拓し、約20分掛けて高巻、無事に橋の上に出れました。鳥坂橋から車が置いてある益谷橋までは10分。車へは14:34に着きました。

ワンポイントが難しい滝の登りやクライムダウン、厳しい高巻。今回はいい訓練になりました。

山行最終日:2013年8月25日
メンバー:長島(L) 伊地知
山域: 同行者の記録
山行形態:
コースタイム:
地形図:えぶり差岳
報告者:伊地知