玉川 大又沢千本峰沢・でとみずき沢(下降)・いりみずき沢

20日:(晴)

今回は千本峰沢を登って適当なところでビバークするつもりでいたので、朝食を摂ってから自宅を出て飯豊山荘の先の駐車場へ向かい、ゲートの手前の湯沢沿いの林道入り口付近に車を停めた。

あしな沢までは14日とほぼ同様のルートを辿り、魚留滝のあるゴルジュは手前から右岸を巻いた。このゴルジュをまともに突破しようと思うと、確か泳ぎもあったし魚留滝の巻きも悪かった記憶がある。しかし最初から巻くと右岸はやぶではないし傾斜も急ではないので、魚留滝を見下ろしながら結構楽に通過できた。あしな沢出合から約一時間半で千本峰沢出合に到着。

今回も大又沢と桧山沢の出合の手前で徒渉
流れの脇の石の上にいた
魚留滝のゴルジュ
右岸の巻きの途中で魚留滝を見下ろす
千本峰沢出合

 

千本峰沢は開けた河原の中の浅い淵に流れ込んでいる。流程が短いため水量は多くない。出合付近は少し藪っぽいゴーロの沢という印象だ。670Mでは支流側に下流部からの一連のゴーロが続き、本流が左側壁から10Mの滝となって流れ込んでいる。ここは支流を少し進んだところから滝の左岸を巻いて落口に抜けた。

出合からしばらくは藪っぽい
670Mで枝沢に落込む滝

 

幾つか小滝が続いた後、まっすぐに伸びる顕著なV字の谷となって谷底に続くゴーロを見渡せる。正面に見えていた尾根の麓まで来ると、下流部から見えていたゴーロの続きは枝沢であることが確認できた。本流は右スラブ壁に30Mの滝を懸けて視界から消えている。ここも支流のゴーロを進み尾根の基部に連なるブッシュ帯を登って滝上に抜けた。

顕著なV字谷にゴーロが続く
左岸のスラブを流れ落ちる30M滝
30M滝正面

 

渓相は一転して草付の両岸を割って滝が断続するようになる。小滝と12M3段は直登したが、それ以外の主な滝は登れず左岸を草付を交えて巻いた。下部が抉れたような3M滝は右岸落口の高さにバンドがあるように見えたので、手前のルンゼから取付こうとしたが見あげたより悪く断念。滝の先が1070Mの分岐で、ここも支流ルンゼに本流が滝を懸けて流れ込んでいる。本流にはさらに滝が続いているのが見えた。

12M3段の上部
千本峰沢の遡行を阻んだ3M滝
厄介そうな滝が続く上流部

ルンゼをクライムダウンして対岸のルンゼに進路変更する。しばらくルンゼを登ってからルンゼ左側のブッシュ帯に取付くが、本流への復帰点を見いだせないまま枝尾根を詰めて登山道に出ることにした。歪曲したコメツガやマツとその間をびっしり埋める石楠花に阻まれ悪戦苦闘の末、暗くなる間際に登山道に出た。登山道を千本峰山頂方面へ少し歩いたところにかろうじてツェルトを張れそうな場所を見つけてこの日の行動を打ち切った。

 

21日:(晴)
1677M点の少し北にある小ピーク付近まで登山道を辿って、そこからブッシュを掻き分けてでとみずき沢へ向かって下降を開始する。なかなか水の流れは現れないが、涸棚が出てきてクライムダウンしたり懸垂下降したりを繰り返す。左岸から同水量の枝沢を併せると左岸にスラブ壁が迫ってくる。

でとみずき沢への下降地点
巻いた二つ目の6M滝
左岸にスラブ壁が迫る

 

スラブ壁を左に滝が続く。適当な支点が無く、支点工作できそうな所を探したり巻きルートを見定めたりと下降とは言え結構時間がかかる。4M、3Mの滝を右岸から巻いて降りると、左岸から枝沢を二本併せるあたりから開けたゴーロの渓相になる。右にカーブしながらゴーロを降っていくと右岸前方に水量が多い滝が見えてくる。1160Mあたりで流れ込む枝沢に懸る滝だが、地形図ではごく浅い沢地形が見て取れるものの地形図から予測できる水量よりかなり多い。

クライムダウンした5M滝・・・だったか?
1000M付近から開けたゴーロの渓相になる
右岸から滝を懸けた枝沢が流れ込む

 

3M-5Mと続く滝をまとめて巻き、さらに10×5の斜瀑とその先の滝もまとめて左岸を巻く。さらにゴーロを下降していくと左岸から稜線直下に広がるカール状の草叢を水源とする枝沢を併せる。斜度は落ち着いていてそのまま出合まで行けるかと思ったが、すぐに8M滝が懸っていて右岸を巻く。さらに出合付近で左、右に流れが曲がる辺りには滝が連なり、右岸を巻いて下降した。一連の滝を巻くと大又沢の太い流れが見えてきた。

860M二俣手前に懸る10×5の斜瀑
860Mで合流する右俣
8Mの斜瀑
出合付近の滝場に懸る15M3段
もうすぐ出合だが5M滝に阻まれて右岸を巻く
出合に到着

 

でとみずき沢出合からいりみずき沢出合までは小次郎淵沢出合付近にゴルジュがある以外は特に難所がないことがかつての遡行で分かっている。巨岩を配したゴーロや時折出てくる淵の際をへつり、小次郎淵沢出合から始まるゴルジュは右岸を巻いた。約1時間半の本流遡行でいりみずき沢出合に着いた。いりみずき沢は本流の両岸が壁となってその間に深く水を湛える淵の手前で小滝を連ねて流れ込んでいる。

いりみずき沢出合

 

出合からしばらく落込み程度の小滝が続き、一旦落ち着くと狭まった壁に挟まった大岩の下に落ちる大きな滝が見えてくる。直登はできそうもなく左岸の草付からブッシュ帯に取付いて巻こうとするが、見た目以上に傾斜がきつくて悪い。進路修正を繰り返して何とかブッシュ帯に取付いて滝上に降りた。

15M CS滝 左岸の草付から巻いた

 

巻いた先はブッシュ帯が沢筋付近まで来て幾分落ち着いた渓相になる。左岸から枝沢が流れ込む階段状の5M滝と緩い斜瀑5Mを越えると、落下する水の弧が丹精なつるつるの10Mが懸っている。これを左岸のブッシュ帯から巻くと、すぐに2M、4M3条と続いていたのでこれらをまとめて巻いた。

浅い弧を描く10M滝

 

滝場を過ぎるとゴーロの渓相になる。左手に枝沢を分けた後、滝として記録するか迷う程度の滝が懸り、さらに二条に分かれて右側がヒョングった滝が懸る。基部から二条の流れの間を登り上部は左側の水流に沿って登った。左落口にはさらに枝沢が二段の滝を連ねている。

右がヒョングリの二条の滝

 

6Mの末広がりの斜瀑を過ぎてしばらく進むと切り立った両岸を割って落ちる15MのCS直瀑が見えてくる。右壁はややハングしており、水流は宙を舞っている。この滝の直登はできそうもないので左岸の草付に取付いて草付上部に見えている露岩を避けながらブッシュ帯に取付こうとするが、最初の高巻きよりさらに悪い。下部も急だが見た目に反して登るほどに斜度が増してくる上にブッシュがないし足場も浅い。一旦クライムダウンして仕切り直し、若干下流寄りから再度取付く。10Mくらい登った所から側方に見える小さなブッシュまでトラバースして、そこから疎らな小ブッシュを頼りに上部ブッシュ帯に辿り着いて15M滝よりも数十M程上流で沢床に戻った。

15M CS滝 高巻きは絶悪だった

 

再びゴーロの渓相が続き幕場適地が乏しいが、右岸に何とかツェルトを張れそうな岩の上の台地を見繕ってこの日の行動を打ち切った。この日の晩も好天が続いて星がよく見えた。

22日:(晴)
幕場からは前方に厄介そうな滝が見えている。滝の数十M手前の右岸は比較的ゆるい草付となっているが、滝へ近づいていくと切り立った岩壁になっている。引き返すのが面倒なので初めから草付に取付いて滝を巻くことにした。草付は問題なかったが上部のブッシュ帯が綺麗に繋がっておらず、トラバースするのに登ったり降りたりの繰り返しを余儀なくされた。高巻きの途中左岸の枝沢に出た。対岸には壁の最上部から枝沢が滝となって流れ込んでいるが、その滝の落差は100Mくらいありそうだ。枝沢を横断して高巻きを続けて最後はブッシュが沢床近くまで達しているところを見繕って懸垂下降で沢床に降りた。

前方に見える滝と手前右岸の草付
高巻きルートから見た滝
左岸枝沢付近から見下ろした滝
左岸枝沢付近から見た対岸の枝沢に懸る滝

 

下降した先は次第に沢型が浅くなる。まだ厄介な滝があることを想定して早出したが、ゴーロが続くだけでほとんど滝は見当たらない。1430M付近の奥の二俣は合流する沢の間が湧水帯の台地状で、この先で両沢共に極端に水量が少なくなる。

1430M奥の二俣

 

淡々とゴーロを登っていくと稜線のように見えるブッシュ帯が見えてくるが、ブッシュ帯を潜り抜けると草原が続いている。草原に刻まれた窪が消える頃、上部の登山道を歩くパーティの人影が見えてきた。斜度を増した斜面を九十九折に登って登山道に出た。宝珠山のわずかに南の小さなコルで、辺りにはニッコウキスゲやヨツバシオガマが咲き誇り、道沿いには苺が甘酸っぱい実をつけていた。

源頭部付近で稜線のように見えたブッシュ帯
宝珠山

 

靴を履き替えて一服して下山を開始して、吸水と昼食のために長坂清水で休憩して駐車場に戻った。

 

 

遡行図:千本峰沢でとみずき沢いりみずき沢

山行最終日:2020年8月22日
メンバー:長島
山域: 飯豊連峰 荒川
山行形態: 沢登り
コースタイム:
20日:駐車場(8:20)-大又沢・桧山沢出合(9:10)-あしな沢出合(11:50)-千本峰沢出合(13:20)-登山道(19:00)-BP(19:10)
21日:BP(7:10)-860M左岸枝沢出合(11:40)-でとみずき沢出合(12:50/13:10)-いりみずき沢出合(14:40)-1120M付近幕場(18:10)
22日:1120M付近幕場(6:20)-1220M付近(7:55)-1430M付近(8:35)-登山道(9:40/10:10)-駐車場(13:55)
地形図:飯豊山
報告者:長島