玉川 大又沢大岩沢

大又沢最大の支流である大岩沢を訪れた。2012年に大又沢を遡行した時に出合左岸の岩壁と出合から見える巨岩のゴーロが印象的だった沢だ。

今回は本社ノ沢と合わせて9月4日から二泊三日の計画を立てていたが、4日は大気の状態がかなり不安定ということだったので一日遅らせ、7日に用事がないことが確認できた場合のみ三日目を実施することにした。

 

9月5日:(晴のち曇)

入山は大日杉だが、手ノ子から中津川に向かう道が通行止めのため、横川から九才峠を越えて迂回しなければならなかった。

先ずは大日杉の駐車場に車を停めて地蔵岳へ向かう。食料と70Mのロープがずっしりと肩にのしかかり脚の負担が大きい。山頂を過ぎて少し降った所で残雪時の水場となっている湿地帯に降りた。

地蔵岳直下の湿地帯

 

この湿地から大又沢1150M地点へ向かって流下する枝沢を降る。この沢は残雪期にスキーヤーが本社ノ沢へアクセスするためのルートとしては結構メジャーだが、無雪期に使われることは稀ではないだろうか? 出合付近にいくつか2~3Mの滝が懸るが、全体に少し開けた藪沢といった感じで難所はない。ただ上流部の不安定なガレや倒木・枯枝の堆積が多く意外に時間を要した。

大又沢1150M付近に出る

 

残雪期の本流は雪渓で埋まり、所々に生じた切れ目から垣間見える沢床には勢いよく水が流れてた印象があるが、この日の本流はあっけないほどに穏やかな沢である。

1150M付近の大又沢

 

しばらく降っていくと水流が二分される。左岸寄りの流れに懸る滝を巻くように右岸寄りの流れを降ると淵があり、淵から流れ落ちる2M滝の下で本社ノ沢と出合う。本社ノ沢も同様に出合に2M滝を懸けている。滝上で本社ノ沢へトラバースして2M滝の左岸を巻き気味に下降して出合に降りた。

本社ノ沢が2M滝を懸けて流れ込む

 

本社ノ沢出合から大岩沢出合までは滝もあるし淵もあるがほとんど河原かゴーロが続いている。滝や淵も特に意識しなくても巻いて通過してしまうものがほとんど、要するに平水時は何もないに等しい。ただゴーロの岩が大きいので、視界が遮られることもあるし越えるには一苦労するところがいくつかある。

下降とは言え大岩に阻まれて体力を消耗する

 

少し谷幅が狭まった滝交じりの巨石ゴーロ帯を過ぎると、8年前の記憶ながらはっきり覚えている岩壁が見えてきた。大岩沢出合左岸の壁である。あとは河原を歩くだけだが、一瞬大倉沢を見過ごしてしまったかと思ったもののその出合は河原の途中にあった。本社ノ沢出合から2時間弱で大岩沢出合に着いた。

大岩沢出合の見覚えのある岩壁が見えてきた

 

出合から見る大岩沢は巨石で埋め尽くされているかのようだ。出合で一服してから遡行を始める。

出合付近の大岩沢

 

大岩故に段差が大きいので水と同様に蛇行して進む。ゴーロの中にいくつか滝が懸っているが、巨石を縫って進んでいると越えている。

巨石のゴーロが続く 滝も概ねゴーロ滝

 

幾つかの滝を過ぎたところで右岸にハングした壁が見えてくる。地形図に見合わずゴルジュがあるのかと思ったが、ほんの短い間だけでしかも何もない。壁の間を抜けるとまた開けたゴーロになる。

右岸にハング壁が迫るがすぐに開ける

 

まもなく7×10の滝が現れ、水流左側を登ろうとしたが滑るので上部を巻き気味に越えた。

7×10滝

 

右岸に滝を懸けた枝沢を分けた後、三つほどゴーロ滝を過ぎると1150M付近で滝場となる。最初は12M滝で左壁を側壁基部に沿って登る。

12M滝

 

小ゴルジュ状に続く三つの滝をまとめて右岸から巻くと、左岸に簾状の滝を懸けた枝沢が見えてくる。

簾状の滝を懸けて左岸から枝沢が流れ込む

 

枝沢を過ぎると沢は左に曲がって、その後次第に斜度が緩み一層開けてくる。平坦で大きな石がない所を探しながら進んで、左岸から枝沢が流れ込んでいる対岸に程々の場所を見つけた。こちら側の岸にも細い枝沢が入っており、ビールを冷やすのにちょうどよかった。

枝沢を過ぎると広いゴーロの河原が続く

 

整地してテントを張った後、10分程度で集められるだけの薪を拾ってきて火を熾し、久し振りの焚き火でまったりとした気分に浸った。

幕場周辺の流木を集めて焚き火

 

9月6日:(晴)

幕場を後にしてからしばらくゴーロが続くが、出合と比べると巨石が少ない。

河原の一角を整地した幕場

 

地形図で1276Mが記されている地点で沢はクランク状に屈曲し、二つの滝を懸けている。最初の3Mは水流左側を越え、次の4MCSは右側を小さく巻いて越えた。

クランク状屈曲部に懸る4MCS

 

再び平凡なゴーロが続いて、1330Mの屈曲点に至る。正面に真っ直ぐに詰め上がっていく枝沢には雪渓が残っていた。

ゴーロの河原が続く

 

屈曲すると次第に斜度が増してきて、ゴーロ滝が続いた後に12M2段の屈曲した滝が懸る。左岸から小さく巻くと、さらに3M、5Mと続きこれらも左岸の低い草付から小さく巻いて越えた。

1350M付近の屈曲した2段12M滝
12M滝を越えた後小滝が続く

 

短い滝場を過ぎて河原を進むと、1430Mの二俣に至る。計画時にどちらにするか迷ったが、かつて山頂から見下ろした光景を谷から見てみたい思いから左俣を遡行することにした。

二俣 左俣は本山小屋方面に詰め上がる

 

二俣を過ぎても相変わらずゴーロで、簡単な滝がいくつか懸るのみ。左岸に続く岩壁や岩峰を眺めながらゆっくりと詰め上がっていく。

右俣左岸の岩峰
右俣左岸の岩壁

 

途中岩壁の基部に豊富な水量の湧水があって、水を汲んだ。冷たくて美味い。

左岸から豊富に湧き出る湧水

 

次第に伏流を繰り返すようになる。左岸に岩壁が見えなくなり、沢型は草原に窪となって消えていく。なるべく露岩を繋いでいくように詰めて行き、2015M付近で大嵓尾根登山道に出た。

源頭近くなると伏流を繰り返す
遡行してきた沢筋
登山道直下の草原を詰める

 

山頂は結構近くに見えていたが、今回の荷物の重量で脚が前に出ない。約20分でようやく山頂に達した。山頂は15~20名くらいの登山者が休んだり景色を眺めたりしていた。山頂から遡行してきた大岩沢を見下ろしたが、かつての印象のように荒涼とした、かつ吸い込まれそうな迫力は感じなかった。今回は晴天で明るかったうえに季節がら緑が多かったせいかもしれない。

飯豊山山頂 多くの登山者がいた
山頂から見下ろした大岩沢

 

山頂を後にして、一ノ王子で小休憩、御坪を少し過ぎたところで昼食を摂って大日杉に戻った。

 

 

遡行図

山行最終日:2020年9月6日
メンバー:長島
山域: 飯豊連峰 荒川
山行形態: 沢登り
コースタイム:
5日:大日杉(9:25)-地蔵岳(11:40)-湿原(11:50/12:10)-1150右岸枝沢出合(13:05)-本社ノ沢出合(13:20)-大岩沢出合(15:10/15:25)-標高1200M付近(17:15)
6日:標高1200M付近(6:45)-大嵓尾根登山道2015M(10:15)-飯豊山(10:35)-御坪(13:00/13:20)-地蔵岳(14:15)-大日杉(15:25)
地形図:飯豊山・岩倉
報告者:長島