滝谷沢~大日沢~天狗沢~御西沢中俣

17日:

豊栄PAで前泊して玉川方面へ向かい、飯豊山荘の少し先の駐車場に車を停めるが、既に数台の車が停まっている。

支度をして石転び沢ルートへ向かうが、梅花皮小屋まで誰にも会わなかった。必要以上にアップダウンを繰り返しているかのように思える左岸道が終わり、門内沢出合で登山道が河原に降りる。

梅花皮沢出合付近から見た主稜線
右のコルに梅花皮小屋が見える
梅花皮雪渓

石転び沢へ100M程進むと、見通せる限り続いている雪渓歩きとなる。雪渓は安定しており、滑らないように明瞭なスプーンカットを繋いで歩くだけである。雪渓は北俣沢出合で終わっており、左岸が崩れかけているので、右岸に降りてから沢を渡って登山道に合流した。これ以降雪渓はなく、夏道を辿って梅花皮小屋に着いた。

梅花皮小屋

梅花皮小屋の脇で昼食を兼ねて休憩した後、滝谷沢への下降予定地点である御手洗の池の少し先へ向かう。烏帽子岳の少し先までは、夏に歩いているので記憶に新しい。御手洗の池を過ぎて100Mくらい先で、登山道南西側の笹藪をかき分けて尾根を越えると、小さな草原となっていた。この付近は尾根の高低差が少ないので、下方を見通せないと下降点の確認が難しいが、この日は晴天で、飯豊川対岸の山肌まで見通せる程だったので、迷わずここから下降を開始した。

登山道から笹を掻き分けて尾根の反対側へ
滝谷沢の流れの果てに飯豊川左岸の山肌まで見通せる

少し笹を分けて下ると、間もなく窪が現れる。しばらくはかなり急斜面なので、右岸の笹を掴みながら下っていく。1700M付近は岩盤帯、1670M辺りからは不安定なゴーロとなり、谷幅が広がってくる。

1500M辺りからは幾つかの小滝が懸り、巻いたりクライムダウンしたりしてクリアすると、再びゴーロとなり、1350Mで右岸から顕著な枝沢と、左岸からは地形図では読み取りづらい小さな枝沢を合わせる。ここから傾斜を増して、両岸は切り立ってくるが、沢床は相変わらずゴーロが続く。

多少小滝が懸っているがほとんどゴーロ続きの滝谷沢

右岸に滝を懸けて並ぶ二本の枝沢を見送ると、谷は右へカーブし、直ぐに左に曲がり始める。右岸に細い枝沢が滝を懸けて流れ込み、そのすぐ先は滝となって一気に落ち込んでいる。時間的にも切り上げ頃なので、尾根上に盛り上がった右岸の草地を整地して幕場とした。

滝を懸けて一気に高度を落としている
紅葉が夕日に照らされる

下流には飯豊川左岸の山肌が近くに迫っている。何度見ても威圧感がある。この夜は快晴で、満天の星空を眺めながら寝転ぶ。放射冷却もなく、朝まで肌寒さを感じることもなく、快適だった。

一人なら何とか横になれる場所があった

18日:

下降開始早々、滝である。見下ろした感じでは、三つの滝が続いていそうだ。左岸の草付を少し登ってブッシュ帯を辿ろうとしたが、草付に取り付いてみると思ったより斜度がないので、露岩を繋ぐようにクライムダウンして滝下に出た。少し戻って滝を確認すると、見立てた通り三本の滝が続いており、上から、4M、8M、10Mといったところだった。

幕場付近から滝下を見下ろす
基部から見た巻いた滝

左にカーブしていくようにゴーロを行くと再び滝が懸る。滝の下はゴルジュとなっており、間近に飯豊川左岸が迫っている。どうやら、ここが本流から見える滝であろうと目星がついた。ここも、左岸の草付きをブッシュと露出した岩を交えてクライムダウンすることができた。この滝は、下から見上げた感じでは15Mといったところ。滝下も出合いまでゴーロとなる。

再び大きく落ち込んでいる
切り出したような美しい壁面の15M滝

出合は雪渓が残っており、雪渓下にはブロックも転がっている。雪渓を足早に潜り抜けると、少し下流でスノーブロックが谷を塞いでいる。乗り越すと崩れそうなので、狭まった流れに浸かって潜り抜けるが、潜った先が浅い釜のようになっており、渦巻く冷たい流れに身を洗われているようだった。これより下流はゴルジュながらもゴーロが続いており、左岸には大岩を配して大日沢が出合う。

出合の雪渓を潜る
ブロック群を巻き切ることができず水流に乗って潜った
大日沢出合

大日沢に入るとすぐに滝の中間に岩が挟まった3M滝が懸る。右から越えようとしたが、上部の岩が見た目より張り出していてザックが引っかかるので、ザックを押し上げて空身で這い上がった。

4M2条を越えると、左へ向きを変えて18Mの滝が懸る。右から巻くように岩場を登るが、上部が外傾した上に小石が乗っていて少し悪かった。滝上のテラスで次の滝を正面から見た後、ここも右側壁を巻き気味に越えた。さらに二つの滝を越えると、右から滝を懸けて枝沢が注いでいる。

流れが屈曲しているところに懸る18M滝
正面から見た18M滝

10M、3Mの滝を越えると、3M、10Mの滝が見えてくる。巻きルートを探しながら近づいていくが、3Mは問題なく、10M滝も左端を行くと斜度があまりないので簡単に越えられた。

10M滝
左側を斜上した10M滝

右岸は灰色の壁、左岸は崩壊気味の赤味がかった岩の壁に挟まれたゴーロが続き、1250Mで右岸にゴーロが続く枝沢を分ける。

灰色の壁と赤っぽい壁に挟まれたゴーロ

右岸に沢を分けると滝が続き、最初の10Mと4Mは難なく越えられたが、次の12Mは登れずに左岸の草付きから巻こうとするが、中盤が結構悪く、何とか上部ブッシュ際の安定した足場にたどり着いた。続く4Mもまとめて巻くように越える。

ゴーロの枝沢を分けると滝場になる
12M滝は登れず左岸を巻く
12M左岸の悪い草付から

さらに8Mの滝を左から越えると、スラブに二段になって6M、8Mの滝が懸り、ともに右側を登った。さらに滝を越えると、ゴーロとなり、1500Mでは両岸から枝沢が入る。

幾つか滝を越えるとゴーロになる

スラブの左壁とハングした右壁に挟まれて、7M、6M、6Mの滝が懸り、左壁を次第に流れから遠ざかっていくように巻いて越えた。赤と黒に色づいた花崗岩が露出する谷を進むと、1580Mで右に(1:1)のゴーロの枝沢を分ける。ゴーロに弾ける飛沫が陽光に輝いて見えた。

傾いた壁の間を落ちる連瀑
ゴーロの枝沢の出合

簡単な滝を4つ越え、1650M過ぎで樋状の連瀑を左から巻いて越えると、再びゴーロとなる。左に曲がると伏流して、水流のない転石の帯となって二俣を迎える。左俣へ進むと、1980Mで笹藪に突入し、2125M付近で尾根を越えて登山道に出た。この後、大日岳まで往復して、御西小屋へ向かった。

源頭部は開けたゴーロ
とても稜線まで続くとは思えず藪漕ぎを覚悟する
ハイマツが隠れた笹薮を漕いで登山道を目指す
登山道で御西小屋へ向かう

19日:

ガスで視界がよくない中、御西小屋を発つ。約30分で天狗の庭まで来るが、御西沢の1300M右岸の枝沢には降りたくないので、さらに先へ進んで、登山道が登りに転じる辺りで尾根を乗り越して笹藪の下降を開始した。

100Mくらい笹藪を下降すると、ようやく窪が出てきて藪漕ぎから解放される。左からの窪と合流すると、水が流れ出し、さらに右から細い流れを併せる。4×3の小滝を過ぎると、右から(1:2)の流れを併せる。4M2段、3Mをそれぞれ右、左から笹を掴んで下降すると、左に曲がりながら急なゴーロとなって落ち込み、左から(1:1)の流れと合流する。さらに小滝と小滝で右からの流れと(1:1)を併せる。ここで、右俣左又右沢を下降してきたことが分かった。

天狗沢源頭部

左手に大岩を配した2M滝を過ぎると、左から細い枝沢を併せる。3×4を過ぎ、左に少し折れて3Mの滝が懸るが、この辺りは豪快に開けて斜度もある。次の7M滝はクライムダウンもできず、両岸ともに立っているので、左岸を少し登って灌木に捨て縄をして懸垂20Mで7M滝の下に続く1.5M滝の下に降りた。

中流部にいくつか滝が懸っている

7M直瀑は右側壁を階段を降りるように下降し、15×15 3段の滝は左側を巻いた。開けたゴーロの谷となり、右から細い枝沢を併せた後、3M滝の左側を巻いて降りると、4M滝が懸る出合に着いた。天狗沢出合一帯は斑模様の岩盤のナメが印象的だ。

7M直瀑
15×15 3段斜滝

本流は釜を持った2×3の斑模様のナメ滝が懸り、左側壁沿いをへつりながら登る。御西沢出合付近には、ボロボロの雪渓が見えており、そこに至るまでは険悪な岩壁のゴルジュだが、底はゴーロが続いている。

出合 まだら模様の岩盤が目立つ
出合付近に懸る本流の小滝
本流を遡行して二俣へ向かう

雪渓入口はブロックに谷が塞がれている。ブロックが堆積する右側の壁をへつって登ってみると、足早に通過できる条件は整っていそうなので、急いで雪渓の入り口付近をやり過ごした。御西沢出合付近では、御西沢側にスノーブロックが堆積している。本流の左岸から右岸に渡り、今度は御西沢の左壁沿いを足早に駆け抜け、ようやく人心地つくことができた。

雪渓を抜けると早速8M直瀑が懸る。右側の雪渓際の岩壁を登って巻き気味に越えるが、上部が外傾しており、雪渓に取り残された土砂が堆積していて悪い。この後は2M、2M、8Mと滝が続くが、問題になる滝はない。谷がゴーロとなって左にカーブを描くと、右俣がまっすぐに並んだ50M4段の滝を懸けて流れ込んでいる。思わず、すごいと口にしてしまった。尚も転石累々たるゴーロを行くと、左手に天狗の庭付近から流下してくるゴーロの枝沢を分ける。

雪渓を抜けると8M直瀑が懸っていた
幾つかの滝を越えるとゴーロが続く
ゴーロの中ほどに大連瀑を懸けて右俣が流れ込んでいる

本流は一旦短いナメとなるが、またすぐにゴーロと化す。再び谷が左にカーブすると、相変わらずゴーロが続く左俣と、スラブ壁に挟まれた連瀑の中俣が出合う。

滝を連ねる中俣

中俣のスラブのゴルジュは、下部はホールドが多いが、登るにつれて鉈で割ったようになってくる。下段の滝を突っ張りを交え水流を登るが、次のCSは少し難しくなり、左壁に逃げて、左俣と中俣の中間尾根を登った。ブッシュ交じりだが、なかなか快適な岩登りだ。中間尾根からは両俣を見下ろすことができ、左俣はさらに先までゴーロが続いており、中俣はCS滝の上に見えていた滝の上にも、小滝と10Mクラスの滝が続いているのが見て取れる。足下はブッシュも疎らな急峻なスラブ壁となっているので、ブッシュ帯を辿って、先に見える10M滝上まで巻いた。

中間尾根から見下ろした左俣
右壁がハングした大きな滝の落口を目指す

狙ったポイントに下降すると、谷は左に折れて4M2条「八」の字滝が懸る。左の水流の左側を越えると、小さなゴルジュに一つの小釜を挟んで4つの落ち込みが連続する。小ゴルジュを抜けるとゴーロとなって、1470Mで右岸に枝沢を分ける。

4Mの椀を伏せたような滝が懸り、さらにその滝に水流を落とすようにカーブしたスライダー状の8×10が続く。8×10の中間までは右側を登り、途中で左壁のスラブに乗り移って巻き気味に越えた。続く5×8の2段は中段まで水流中、上部は右壁沿いを登って越える。さらに10M3段を右から巻き気味に越え、12×25を越えると、一連のナメ滝群が終わって、1530Mで右岸に(1:4)の流れを分ける。

カーブしたナメ滝
この一帯はナメ滝が続いている
1530M付近で左に枝沢が分かれる

三つの滝を越えると、ゴーロとなり、途中8M、17M4段の滝が懸るが、問題になるところもなく1700Mの奥の二俣に出た。水量比は(1:2)で右又が本流に思えるが、緑の笹に囲まれた右又と、薄黄金色の枯草帯へ続く左又とを見比べて、左又へ進む。

8M滝
17M 4段斜瀑

一旦伏流し、さらにボサが被るが、再び開けて、1830M付近でさらに水流が分かれる。草原の中の窪は1885M辺りまで続き、笹のトンネルに入る。やがて窪が消え、笹薮漕ぎになるが、10分程度で尾根を乗り越して登山道に出た。

草紅葉で黄金色に彩られた左又

御西小屋へデポした荷物を回収しに戻り、その後、梅花皮小屋へ向かった。

20日:

ガスと西からの強風に苦労しながら、地神北峰へ向かって歩く。風に体温を奪われる分、温まろうとして自然に足早になるのか、コースタイムの半分で地神北峰に着いた。丸森尾根を下っていくと風も弱まってきて、文覚沢を見下ろしながらの快適なハイキングになった。玉川本流が見えてからも、小さく登り返したりしてなかなか高度を下げない登山道にうんざりしたが、丸盛小根もコースタイムよりだいぶ早く下降していた。

滝谷沢と天狗沢は、滝もあるが、概ねゴーロ主体であり、この流域においては下降およびエスケープ向きの沢と言える。
大日沢は、冗長な部分は多いが、快適な滝登りができる沢である。ただ、詰めの笹藪漕ぎが少し長い。
御西沢は、悪い草付の巻きもなく、谷川の沢を登っているようだった。左俣はどこまでゴーロが続いているのか確認していないが、ちょっと登る気はしない。一方、右俣は出合の滝が見事で、その上部も中俣同様の内容が期待できそうで、登ってみたいと思った。尚、出合の滝は左側を登って行けそうだった。
この流域は、個々の支流が快適でも、本流を経由するアプローチに少なからず難があることが問題となる。

 

遡行図:滝谷沢大日沢天狗沢御西沢中俣

山行最終日:2015年10月20日
メンバー:長島
山域: 飯豊連峰 加治川
山行形態: 沢登り
コースタイム:
17日:飯豊山荘付近駐車場(7:15)-石転び沢門内沢出合(9:25)-梅花皮小屋(12:25/45)-御手洗の池(14:15)-滝谷沢1180M付近(16:45)
18日:滝谷沢1180M付近(7:30)-出合(8:30)-大日沢1140M付近(9:50)-1580M付近(12:15/50)-登山道(15:15)-大日岳(15:20)-御西小屋(16:25)
19日:御西小屋(6:30)-天狗の庭(7:00)-天狗沢出合(9:35)-御西沢中俣1530M付近(11:35-12:05)-登山道御西小屋北北西1945M付近(13:25)-御西小屋(13:35/14:05)-梅花皮小屋(16:30)
20日:梅花皮小屋(6:40)-北股岳(6:55)-門内小屋(7:30)-地神北峰(8:15)-飯豊山荘付近駐車場(10:30)
地形図:長者原・飯豊山・大日岳
報告者:長島