一ノ戸川 大白布沢タカツコ沢・穴沢

27日(小雨)

御沢キャンプ場の駐車場で支度を済ませるが、雨脚が強まったため、しばらく炊事場の屋根の下で時間をつぶして、小雨になった頃に出発した。

昨夜から雨が少し強く降った時間帯もあったため、増水しているかと思ったが、ほとんど増水していないようで、雪代が残っていた昨年の6月と比べると、半分程にすら感じるほど、水量は少ない。尤も、これが本来のこの時期の水量なのかもしれない。

堰堤を過ぎるところまで、大滝遊歩道を歩き、さらに河原を歩いていくと、見覚えのある釜を持った小さな斜瀑が見えてくる。左岸の踏跡を辿って滝を巻くと、すぐにタカツコ沢出合に出る。

タカツコ沢に入ると、すぐに小ゴルジュとなって、釜を持った2M滝を左岸の藪から巻いた。翌日の下降時には、この滝を右岸から巻いたが、この方が楽だった。そこから穴沢出合までは、何度か膝下くらいの徒渉を交えながら河原を歩く。

穴沢は本流であるかのごとくまっすぐに伸びているが、水量は本流に対して3分の2くらいである。タカツコ沢は5×8の斜瀑を懸けて合している。直後には水流を二分して、左に釜を持った6M直瀑、右には5Mの斜瀑が懸り、右側の滝の水流の左側を登る。さらに大きなCSを持った3Mが懸るが、右側の大岩の裏から簡単に越えられる。

小滝混じりのゴーロを行くと、3条の優美な8M滝が見えてくる。昨年は瀑水に阻まれて取付けなかった右壁の斜上バンドに取付いて、簡単に落口に出る。一応、匿名さんのためにロープを引いて登った。磨かれたすべすべの花崗岩を滑るように落ちる3~4Mの滝を幾つか越えると、ゴーロの奥に水流を二分させた大きな滝が見えてくる。昨年は左側を登って後続が手こずっていたので、今回は左岸のブッシュ帯から巻いた。簡単な巻きだが、初級者の匿名さんは少し手こずっているようだった。

8M3条の滝

岩盤を穿ったような流れに小滝や斜瀑が続くが、この辺りは昨年との水量の差がはっきりとルート取りに現れたところだ。今年は水線を縫うようにほとんど自由に遡行できた。左側がゴーロ状の連瀑状の10×25も、昨年は大きく巻いたのに対して、今年は水線に絡むように登れた。これ以降、昨年はほとんど雪渓に埋もれており、初遡行の気分に浸りながら登る。

岩盤を穿ったような流れに
6Mスラブ滝
10×25のS字状多段のナメ滝

平凡な河原となって左へ曲がっていくと、間をおいて次々に3M前後の滝に出くわし、右岸に滝を懸けた枝沢を分ける。そこから4M、5×7を難なく越えていくと、登れない5M滝に阻まれて、左岸のブッシュ帯を巻いていく。ブッシュ帯から沢をのぞき込むと、さらに難しそうな6M滝が懸っているのが見えたため、これもまとめて巻いて、懸垂下降で沢床に降りた。

3M前後の滝が続く
5M滝に続いて6M滝もまとめて巻いた

20Mのナメを歩き、6M、10M2段を越えると、次の8×8の樋状は右岸を巻いて、残置を利用して一旦懸垂で沢床に戻り、次の8Mも再び右岸を巻いて懸垂で沢床に戻った。しばらく平凡なゴーロが続き、右手に地蔵沢を分ける。尚もゴーロが続き、ポツンと懸る5M滝を越えると、だいぶ谷が開けてきて、右手に細い支流を二本分ける。左岸寄りの河原に幕場にできそうな平地を見つけたので、遡行を打ち切ろうかとも思ったが、匿名さんがまだ歩けそうだというので、三国小屋まで行くことにした。

10M2段・・・だったか?
ゴーロが続く
だいぶ開けてきた

あとはゴーロを歩いて、最後にスラブを登れば三国小屋かと思ったが、そうはいかなかった。ゴルジュ状の谷となって4~5Mの滝が4本続き、一旦ゴーロとなるが、また小ゴルジュに小滝が三つ続く。難しくはないし、大した距離ではないのだが、匿名さんの歩調が鈍く時間がかかる。いい加減スラブ帯になってくれと願うものの、さらに3M滝が二つ続く。18時を過ぎて、かなり薄暗くなってきた頃、さらに前方に滝が見えてきて、右も左も急な草付となっていたため、手前のやや傾斜の緩い草付にとりついて、そのまま稜線まで登り切ることにした。

上流部再び滝場となる

匿名さんの草付登攀にはかなり不安があり、実際によくスリップするので、ロープを引いて登る。30Mほど草付を登っていくと、いつの間にか草付スラブとなっている。ヘッドライトを灯しながら、ほとんどノーハンドでも登れる程度のスラブをひたすら登っていくと、三国小屋の西側20Mくらいのところに詰め上がった。

三国小屋について、乾いた服に着替えて、ようやく一息つき、何とか予定通り小屋に泊まることができた。

28日(曇)

一階を埋め尽くしていた12名の団体が出発すると、管理人含め飯豊の山の案内人たちが二階の一角で団欒していた。前夜、寝ているところで物音を立てて食事をしていたことを詫び、少し雑談をしてから、小屋を出た。

川入へ向かう登山道を歩き、地蔵山の水場を通るトラバース道が尾根道と合流した少し先で、登山道を右手(南)に外れて樹林帯を下降すると、10分強で穴沢源頭の窪に降り立った。

しばらくは小さな段差がある程度だったが、2.5Mの滝をクライムダウンすると、難しそうな5Mの滝が懸っており、草付混じりの斜面の高巻きも匿名さんには難しいと思い、ブッシュに捨縄を懸けて懸垂下降した。続く8Mも同様に捨縄で懸垂下降となる。沢脇からすぐに樹林帯となっており、支点には困らないが、この調子だとあと何本シュリンゲを残置することになるやらと、少し心配になる。幸い、この後しばらくはクライムダウンできる滝がいくつか懸っている程度で、平凡な流れとなってくる。

5M滝を懸垂下降
8M2段の滝以降はしばらく容易に下降を続ける

1000Mで左岸から横峰付近からの枝沢を併せるが、この枝沢の方が(2:1)で水量においては優勢である。4M二本を立て続けにクライムダウンすると、20M5段の滝に阻まれる。懸垂下降するにも落差と距離があってマルチピッチになりそうなので、ここは敢えて左岸の高巻きを選択する。急斜面のトラバースをしないように、傾斜が緩むところまで10Mくらい登った所から尾根状になったところに取付いて下降していくと、滝下30Mくらいのところに降り立った。それも束の間、すぐに滝に阻まれ、再び左岸を巻く。振り返ると、我らを阻んでいた滝は9M2段であった。ちょうど左岸から枝沢が入っている。

1000M付近の河原
20M5段の滝
9M2段の滝

出合のすぐ下はゴルジュとなっており、小さいながらもクライムダウンが難しそうな滝が二つ続いている。ここも左岸の藪に取付いて、懸垂下降でゴルジュ下に降りた。下降点で、沢は右に曲がっており、左岸は傾斜が緩んだ草付となっている。地形図にもこの特徴は現れている、880M付近である。7M2段をクライムダウンすると、少し立っている8Mの滝が懸っており、三回目の懸垂下降をする。この滝の右壁はツルツルのスラブ状で、懸垂下降の練習にぴったりだ。次は5M2段を三本目の捨縄で懸垂下降し、続く6Mは倒木を支点に懸垂下降する。出合まで行ってから昼食を・・・と考えていたが、空腹感が増してきたし、歩みが遅いため結構時間がかかっているので、滝下の河原で昼食休憩とした。

小ゴルジュの5Mと2Mの滝を巻いて懸垂下降
のっぺりした右壁の8M滝

食後、河原を降って行き、簡単の小滝二本を下降すると、間もなく出合に着いた。前日遡行したルートを逆向きに歩いて、穴沢出合から約1時間10分で御沢キャンプ場に着いた。

タカツコ沢は確かに飯豊では入門の沢かもしれないが、遡行距離や滝の数、高巻きの難易度などを考慮すると、決して初心者向きではなく、東京近郊の沢を基準にすれば中級の沢とったところだと感じた。
同行者のレベルによって、所要時間も異なり、同行者を気遣う分だけ余計に難しく感じたのかもしれない。

 

同行者の記録

遡行図

山行最終日:2016年8月28日
メンバー:長島(L) 高森 匿名
山域: 飯豊連峰 阿賀野川
山行形態: 沢登り
コースタイム:
27日:御沢キャンプ場(8:30)-タカツコ沢出合(9:00)-穴沢出合(9:55)-880M付近(11:55/12:15)-1085M付近(15:25)-1260M付近(16:15)-スラブ帯基部(18:20)-三国小屋(19:40)
28日:三国小屋(7:20)-登山道水場トラバースルートと尾根ルート合流点付近(8:20)-穴沢源頭部の窪(8:30)-1000M付近(10:50)-845M付近(13:20/13:40)-穴沢出合(13:55)-御沢キャンプ場(15:05)
地形図:大日岳・川入
報告者:長島