前2週とも簡単な沢が続いていたので、赤津沢東ノ沢に入りたいと思っていたが、この週の山行に匿名さんがエントリーしてきたので、初級者がいる場合のルートとして用意した内川へ行くことにした。
特に難しい所はないと思っていたが、内川の上流部左岸一帯はスラブが露出した険しい山相で、決して易しい沢ではなかった。
10日(晴)
泡の湯の手前で山に登って行ってしまう道に進んでしまって進路修正、泡の湯を過ぎてからも沢から離れていく方向に林道を進んでしまい引き返し、さらには中ノ俣川沿いの道を進んで引き返した後、ようやく目的の林道に戻るとすぐにゲートがあって車を停める。
林道はゲートの先も続いており、横岩沢出合より50M程進んだところで終点となっている。横岩沢出合と林道終点にそれぞれ車二台ずつとテント数張りがあって、後程これらの主が釣師であることが分かった。横岩沢の車は土浦ナンバー、終点の車は大宮ナンバーだった。
林道の先には明瞭な山道が続いており、10分強で沢に降りた。山道は一旦右岸を行ったあと、再び左岸に続いていたようだが、往路では気付かずに、沢を遡行した。
入渓点から黒石沢出合を過ぎるまでは、所々に瀞があったりするが、概ね平凡な河原が続き、難所は皆無である。出合は(2:3)でつぼけ沢の水量が多く、沢床も若干低く黒石沢が流れ込んでいるように見える。
つぼけ沢に入って少し遡行すると谷幅が狭まり山の渓流の雰囲気となる。そこで、先行していた二人組の釣師と遭遇する。二人は林道終点にテントを張っていた大宮ナンバーの人たちで、土浦の人たちが大量に釣ったおかげであまり釣れないとのことだった。我々が先を遡行することを告げると、この辺で納竿すると言い、快く承諾してくれた。僅かな区間、岩を乗越したりして遡行すると、すぐに開けて広い河原となる。
その後両壁が立ってきて、右に折れると深い釜の奥にもう一つの釜があって、暗い岩陰にハング気味の3M滝が懸っている。壁間いっぱいに流れ落ちており、岩がつるつるなので、少し戻って左岸のブッシュ混じりの壁を登って巻いていくと、踏跡に出た。どうやら山道はここまで続いているようだ。少し上流の涸れた枝沢から沢に戻る。
しばらく平凡な渓相が続くと、低い壁のゴルジュとなり、小さな斜瀑を越える。両壁から滝を懸けて枝沢が流れ込み、その先は棚田状の落込みとなって、ゴルジュを抜けていく。530M付近で右岸に枝沢を分けると、2Mの小滝が懸り、その先で開けて右岸に明るい草付が続く。
開けたのも束の間で、再び壁は低いながらもゴルジュとなる。入口に懸る3M2段を越え、深い小釜をへつる。次のバナナ状の形の釜は左壁がハングしており、その先に深い釜の2MCSが懸る。突っ張るには壁間が広く、右壁の小スラブを登ってCSの上に降りようとするが、バランスが悪い。スラブにハーケン一枚を打ってシュリンゲを通してCSの上に降りる。CSからハンマーは届くが、微妙に遠くて強打できないため仕方なく残置した。
壁間は一旦1.5M程に狭まり、次の2Mナメ滝は釜の右のハングした壁の下から右壁を這い上がる。壁間は広がるが、幅いっぱいの釜に手強そうな3M簾状の滝が谷を塞ぐ。入念なルート検討の後、左壁を2Mほどへつって斜上して、落口左から後続をロープで引き揚げた。樋状のナメを過ぎると、ちょっと深い釜があったが、服を乾かしたいので小さく巻いた。
ゴルジュは終わり、開けた谷の右にスラブ壁が続き、左にはイタドリが生い茂る緩い傾斜の台地が広がっている。スラブの様子は小さな地蔵カルといった感じだ。しばらくゴーロが続き、右には枝沢が分かれていく。三本目の枝沢は(1:2)で水量が本流より多い。さらに(1:1)で左に枝沢を分けると、これまでより規模の大きなゴルジュとなる。
- 4Mゴーロ滝は問題なく横を通過するが、次の5M滝は手がかりが少ないスラブ状の左壁をロープを引いて登る。鶏冠谷左俣の斜瀑のような滝を左のスラブから越えると、遠目に見えていた95M3段の大スラブ滝が眼前に立ちはだかる。下段5Mは左から巻き気味に登るが、ちょっと悪かった。中段は15Mくらいで、左のブッシュ混じりのスラブのやや凹角状になった所を登る。上段は落口を遥か上部に見上げる70M滝だが、よく見ると左壁にバンドが断続していて繋いで行けそうだ。簡単そうなバンドだが、高度があるのでロープを引いて登り、30M2本連結の3ピッチ(長さをフルに使ったわけではない)で落口に達した。
ルンゼをまたいで大滝上に懸る2M滝の上にトラバースすると、落ち着いたかに思ったのも束の間、2条の水流を落とす大きな滝に再び遡行を阻まれる。左岸のブッシュ帯に取付いて巻いていくと、滝下にいるときは見えていなかった左岸枝沢の滝上に出た。こちらは本流よりやや低く、落差は30Mといったところだろうか。枝沢を渡ってさらに高巻きを続け、ようやく本流の滝上に降り立つ。上部のナメ滝状の部分も含めると、高度計が示す数値はは40Mほど上昇していた。
思わぬ大滝二本に時間を要したため、大分時間が押してきた。テントを張れればどこでもよいと宣言して遡行を続けるも、とても源頭近くなった沢筋に幕場を求めるのは無理があり、結局稜線に出てしまった。がき山は展望もない藪山だが、なんとか比較的傾斜が緩い所に笹を押し倒してテントを張ることができた。
11日(曇)
コンパスで入念に方角を確認して、視界がない中になんとか下降する尾根を見出す。その後も何度も方角を確認しては進路を微修正することを繰り返し、1138M付近までの水平距離約1000M程度を進むのに1時間半以上要した。
その先は急なブッシュ帯の降りとなり、上流部の窪を避けてブッシュが多い所を下降する。水が流れている二本の窪の合流付近に出るが、いずれの窪へも傾斜が急なので、右岸の窪の滝の下に懸垂下降して沢床に降り立った。
上流部は3M前後の滝が4本懸り、二本は懸垂下降したが、支点には困らずに問題なく下降できた。680M付近で右岸からナメの枝沢を併せると、短いナメが断続的に現れるようになる。心地よく下降していくと、屈曲した8M滝となって落ち込んでおり、右岸を懸垂下降する。
だいぶ傾斜が落ちてきたので、このまま歩いて下降できるかと思った頃、ナメとなって斜度を増し始めると、その先ですっぱりと切れ落ちた滝となっている。少し戻って右岸の樹林帯に入ると、太い幹が直角に折れ曲がって上に伸びている支点にお誂え向きの木があったので、これにロープを掛けて懸垂15Mぎりぎりで滝の基部から1.5M程の窪みに降り立った。振り返って見上げてみると、滝は中間にコブがあって、亀のようにも見える10Mの幅広の滝だった。
次第に森林帯をゆったりと流れる河原状の沢となり、右から緩やかに流れる枝沢を併せる。さらに河原を下降していくと、右から小滝を懸けて水量が多い沢が合流する。森の中をくねくねと曲がる流れに沿って歩いていくと、二俣(出合)に戻ってきた。
前日遡行した平凡な河原状の本流を下降し、山道を歩いて林道終点に着くと、釣師は既に撤収した後だった。
この後、泡の湯で汗を流して帰路に着いた。
10日:ゲート(イワナ沢を渡ってすぐ)(7:30)-林道終点(横岩沢出合より50M奥)(7:48)-山道徒渉点(8:00)-黒石沢出合(8:55)-650M左岸枝沢出合付近(11:55-12:15)-大スラブ滝上(14:55)-ガキ山(17:50)
11日:ガキ山(7:20)-1138M付近(9:05)-530M右岸枝沢出合(12:00-12:20)-出合(12:55)-山道徒渉点(13:45)-林道終点(13:55)-ゲート(14:20)