赤津沢東ノ沢~彦兵衛沢

17日(曇のち雨)

加治川治水ダムのいつもの駐車場で、新しい折り畳み自転車を下して赤津沢へ向かう。自転車を後輪一輪立ちさせてゲートを通過させなければならなかったが、16インチ18段変速機付きで作りもしっかりしている今度の自転車は調子がいい。しかし、重荷を背負っての自転車はやっぱりきついことには変わりない。約30分で赤津沢の橋の手前に着く。かなり時間を節約できた。

東北電力が加治川ダムの補修工事を始めた今年から、赤津沢左岸の隧道の扉が施錠されてしまった。ここを通る度に入渓ルートを考えていたが、トンネルの左側の斜面が取付きやすそうに見えたので、ここからトンネルのほぼ真上を尾根越えで行くことにした。ブッシュ伝いに登っていくと尾根上は踏跡っぽくなっている。ここから懸垂下降すると、隧道出口の真横に降り立つことができ、取水堰まで作業道を歩く。

入渓すると、谷は左へ右へと蛇行して、両岸が切り立ってくると、奥に登れない滝を秘めた2Mヒョングリ滝が大きな釜に水流を噴出している。二俣までは三度目なので、迷わず右岸枝沢の滝を登って巻きにかかる。途中でスラブ状小ルンゼのトラバースで少々手こずったが、前回と同じウドの斜面に降りる。ミニゴルジュの深場と2M滝を左側壁をへつって越えると二俣となる。西ノ沢の末広滝は相変わらず美しい。

2Mヒョングリ滝の巻き 二俣までの核心
二俣手前の短いゴルジュ

東ノ沢にも少し入った所に滝が懸るが、こちらは遠目にしか見たことがなく、なんとなく右壁が行けるかも?という程度の見立てしかなかった。近づいてみると、7MCSの直瀑で、右も左も登れそうである。下部の取付きはややホールドが乏しいが、上部は確実にバンド状になっている右側を選択した。空身なら取付きもなんてことないが、荷物を背負っていると勝手が違う。取り付き点を丹念に探し、ムーブを考えて下部を攻略。案の定、上部は問題ない。

東ノ沢最初の滝7M

すぐに3M滝が続き、これを問題なく越えると、またも7MCS滝が懸るが、左側を手前方向に戻るように斜上するとそのまま樹林帯に続いており、難なく右岸を巻くことができた。深場を擁した4MCSが続くが、こちらは右側が廊下のような斜上バンドとなっており、歩いて通過できる。滝の落口の奥には草付の斜面が見える。滝を越えると、右に滝を懸けた枝沢を分け、草付斜面を右に見ながら進む。そして、最初に西ノ沢を遡行した時にエスケープして降りてきた支流を左に分ける。

7MCS

ナメと小釜に続いて3MCSまで左側を巻くように越えていくと、深場の奥に3MCSが懸っており、両岸はかなり切り立って手がかりもない。泳いで取付いても、登れない雰囲気なので、少し手前の右斜面を登って巻くことにした。取付きからブッシュまでがかなり遠く、結構悪い巻きだ。ブッシュ帯から上流方面に下降して、灌木に捨て縄を掛けて懸垂下降で落口に立った。

深場の先に懸る3M滝

ほっとしたのも束の間で、沢筋が曲がると斜面の陰から直瀑が姿を現した。10Mくらいありそうで、側壁も立っている。高巻きルートを見つくろいながら近づいていくと、右壁には意外にホールドがあって登れそうなことが分かる。落口までルートを思い描いて取付いてみると、ホールドは見た目よりもよくて、予想より簡単に登れた。

10M直瀑

しかし、息つく間もなく目の前には次の滝が懸る。どうやら連瀑となっている様子だ。この8Mも右壁を登ったが、ここは登れなくても簡単にブッシュ帯に取付けそうだったので、威圧感はない。そして、次は8×8の斜瀑、これは手前3MCSを巻いているときに遠目に見えていた滝だ。右側に斜上バンドがあるので、滝身を見下ろしながら快適に越えた。

8M
8×8

少し間をおいて切り立った側壁の間に深場を擁する5MCS滝が続くが、今度は深場の手前で左壁に登り、左壁の上のバンド状を滝を見下ろすようにトラバースした。左側にハングして覆いかぶさるような岩が張り出しているのを横目に通り過ぎると、少し開けたゴーロが続くように見受けられる。核心を脱したようなので、ここで一息いれて昼食を摂った。

垂直の壁に挟まれたトロと5MCS

案の定、ここからは概してゴーロが続く。ゴーロになってから一旦両壁に圧迫された2Mナメ滝へ続く深場は、泳ぐ羽目になった。左側の岩に隠れた5M滝は左側を巻き、右側に大岩が被さったような4M滝は右を巻く。次の7Mも左を巻いていくと、760Mの二俣となる。水量は(1:2)で右俣の方が多いが、流程からすると左が本流と言えそうだ。右は同規模の二つの沢が二俣のすぐ先で合流しているため、水量が多いのだろう。

左側の岩に隠れた5M滝

左俣へ入るとぐっと水量が減るが、相変わらずゴーロが続く。正面には岩壁を露わにしたピークのような尾根の末端が見えている。岩壁の下を右に曲がっていくと斜度が増し、8×15、3M、そして左壁際に岩に覆い塞がれたような滝が懸る。沢筋が左へ曲がると巨岩帯ともいえる大きさの石のゴーロとなり、その奥に壁の亀裂を落ちるような18M滝が懸る。左壁のリッジ状が登れなくもなさそうだったが、右から簡単にブッシュ帯に取付けそうだったので、右から巻いた。さらに18Mを小さくしたような4M滝を越えると、沢筋の斜度はほとんどなくなってくる。

岩壁を露わにした尾根の末端が見えてくる
次第に斜度が急になっていくゴーロ
18M滝

2Mくらいの小滝を三つ越えると1130M奥の二俣となる。水量比は(3:1)、赤津山へと向かう左沢の方が優勢である。水量が少ない右沢へ進むと、1175Mで右に流れを分けたあたりで、水が枯れる。さらに奥へ進んで、1230Mの窪の分岐付近、左岸の草地を整地してテントを張った。

幾つかの小滝を過ぎると狭く平坦な流れになる

夕方から朝方にかけて雨、時折強く降り、涸れていた沢に水が流れ出す。一時は滝のような音を立てていたので、翌日の彦兵衛沢の下降もためらわれた。

18日(雨時々曇)

朝方になると小降りになり、テントを叩く雨音もないくらいになった。窪を流れる水も減ったようで、小川のせせらぎのような音に変わっている。彦兵衛沢出合から下部は、特に谷幅が狭まる所もないし、穏やかな河原が続くので、何とか下降できると予想して、彦兵衛沢を下降することにした。

幕場から窪を遡行していくと、途中もっと幕場に適した草地の台地が二カ所ほどあり、もう少し奥まで来ていれば・・・と思うが、後の祭り。今回の幕場も、背中に当たるものもなく快適に眠れたので、問題はないのだが。

東ノ沢は源頭部を詰めるだけ
快適な幕場になりそうな草の台地

左岸の斜面に水が流れて少し窪んでいるようなところから藪に入ると、湿地状の窪が続いている。窪は若干進行方向に向かって降っているようだが、雨が降ると、湿地の水は両側に流れていくようだ。窪を辿っていくと次第に斜度が出てきて、彦兵衛沢へと続いている。

湿地の中の細い流れ

蛇行した窪を下降していくと、少し規模の大きな窪が左から合流する。1200Mあたりまで来ると斜度が増してきて、ちょっとした滝が出てくる。12M3段をクライムダウンすると、少し間をおいて5M滝、今度は左岸を巻く。さらに1M滝を降りると、1010Mの奥の二俣で、水量の多い右俣が(1:2)で出合う。

1200M付近
12M3段

しばらくゴーロの下降が続き、4M、3Mと続く滝を右岸から巻くと、さらに5M、2MCSと続いてその下で左からの沢と合流している。5M滝はクライムダウンできそうもないので、左岸の灌木にロープを掛けて、反対側の沢に懸垂下降する。ここが765Mの二俣で、水量は(2:1)で下降してきた左俣の方が多かった。

左から合流する沢に懸垂下降した5M滝(上段の二条)

4Mのゴーロ滝の脇を降りて、少し行くと、上部がナメ状の7M滝が懸る。左岸の壁にハーケンを打って懸垂下降したが、下から見上げると、左岸は階段状で簡単に登れることが分かった。ハーケンを残置するつもりだったが、登り返して回収する。

7M滝

以降もゴーロの中にポツリポツリと滝あるいは滝らしき落込みがあるが、問題なく下降を続ける。600Mで左岸からの支流を併せた後、ナメからナメ滝となってゴルジュに滑り落ちる水流の右岸寄りを慎重にクライムダウンするが、滝に続く深場は胸まで浸かって通過した。ここを抜けるとあとはゴーロが続くだけで、右、左からそれぞれ支流を併せると、間もなく北股川の流れが見えてきた。緑色に濁ってはいるが、下降できないような流れにはなっていなかった。

下降向きの渓相
4×5と深場
出合

急流と深場を避けて河原を下降し、観音滝は右岸の巻き道で降る。巻き道の途中で、熟した葡萄を手あたり次第に頬張る。観音滝の下もルートを見極めれば問題なく、橋の手前でトラロープの斜面を登って登山道に出た。

右岸巻きルートから見下ろす観音滝

加治川ダム脇の林道終点で昼食を摂り、蕨を摘みながら自転車を停めた赤津沢の橋まで歩く。あとは概ね降りなので、自転車で快適に治水ダムへ戻った。

 

遡行図:東ノ沢彦兵衛沢

山行最終日:2016年9月18日
メンバー:長島
山域: 飯豊連峰 加治川
山行形態: 沢登り
コースタイム:
17日:加治川治水ダム(7:35)-赤津沢の橋(8:05/20)-取水堰(8:40)-二俣(10:25)-標高600M付近(12:00/20)-標高760M二俣(13:00)-標高1130M奥二俣(14:50)-1230M幕場(15:30)
18日:幕場(7:25)-彦兵衛沢1010M奥二俣(8:30)-765M二俣(9:25)-出合(10:40)-北股平(11:20)-加治川ダム林道終点(11:55/12:15)-加治川治水ダム(13:15)
地形図:二王子岳・東赤谷・蒜場山
報告者:長島