前川 大持場沢~馬取川

大持場沢は実川集落跡の1km程上流で左岸に出合う実川の支流だが、沢登りの対象としてはかなりマイナーなのではないだろうか。

左岸尾根の反対側は奥川流域ということもあって、初級者でも遡行できそうだと値踏みしてメンバーを募集したところ、匿名さんの参加表明があり、続いて同日程の山行がキャンセルになって流れ込んできた高森さんが参加した。

21日夜、西会津まで行くつもりで高速に乗るが、会津若松-西会津間は夜間工事のため通行止めになっており、仕方なく会津若松ICで高速を降りて、道の駅あいづで前泊した。

22日(曇)

初めて飯豊の沢に来たのが、ここ実川の本流である前川のビンカガグチ沢である。その時は小荒集落付近で林道が通行止めになっており、タクシーを降りて延々と湯ノ島小屋まで歩いて入渓したが、今回は実川集落跡まで通行でき、実川集落跡付近の駐車場まで車で行けた。駐車場はトイレもあり、よく整備されている。

駐車場

実川左岸へは立派な赤い吊橋が架かっており、万治峠越えの登山道へと続いている。左岸には植林が続いており、登山道から分かれて仕事道がついていたので、思ったより楽に大持場沢まで行くことができた。

万治峠の遊歩道に懸る赤い吊橋

一旦林から沢へ下降するが、沢身に降りた目の前に3M滝が懸っている。匿名さんには難しいと思われたため、左岸の斜面を登り返していくと、再び道に出た。道を辿ると、300M付近で出合う左岸枝沢を渡る。出合下部に4M滝、上部に5M滝、枝沢にも5M滝が懸るのを見下ろしながら、枝沢の5M滝上を渡る。枝沢にはさらに2M、ヒョングリ小滝が続いている。そのまま道なりに行くと、すぐに沢に出て道は消滅していた。

3M滝

遡行を始めると、間もなく2×4、2M、2Mと滝が続くが、この時期になるとなるべく衣服を濡らさずに遡行したいもので、2M二本は左岸斜面を登って巻く。沢身に戻るとぽつぽつと滝が懸るが、滝の間は奥多摩や大菩薩のような感じの渓相である。いくつか小滝を越えた後、7Mの滑り台のような滝は左側から巻き、自分はクライムダウンして滝上に降りたが、匿名さんのために立木にロープを掛けて懸垂で降りてもらった。

2×4
滝の間は穏やかな渓相
7M斜瀑
落ち着いた雰囲気

少し遡行すると2条の美しい12M滝が懸る。この滝の基部に水行をしている行者のように見える出っ張りがある。やや大きめに左岸を巻くと、すぐに4M2条の滝となり、今度は右岸を小さく巻く。その後しばらく平凡な大菩薩張りの渓相が続く。

12M 2条の美しい滝

3~4Mの滝を4本越えていくと、地形図で等高線が詰まっている680M前後の連瀑に差し掛かる。遡行していくと最初に6Mの滝が見えてくる。滝の上には草付が見えて飯豊らしさを窺わせている。これを右から巻くと、上部に続く2M滝の上に出る。上流側にはさらに斜瀑の18M滝が続いている。足の揃ったメンバーなら水流脇を登っていけそうだが、今回はさらに流れから離れて、岩とブッシュ帯の境目付近から小さく巻いて滝上に出た。

680M付近の6M滝
18M斜瀑

その後、小滝が続くが問題なく720M二俣に出る。高陽山へ向かう右俣へ進むと、5×10M3段を越えたところから樋状の小ゴルジュに小滝と釜が続く。濡れれば問題なく突破できるが、やはり衣服を濡らしたくないので、途中から右岸を登って上流に向かってトラバースする。再び樋状となるが、今度はツッパリを交えて樋の中を進む。樋状を抜けて小滝を越えると奥の二俣で、進むべき左沢には2M滝が懸っている。

5×10 3段の滝
樋状の流れに小滝が続く

小難しい滝なので、二俣の中間尾根を登っていくと、2M滝から先は連瀑となっており、5M滝一本の後2M滝がいくつか続いている。これらをまとめて巻いて沢身に降りると、平凡な流れとなって、枝沢を分けるたびに水流が細くなっていく。涸棚に近い6M滝を越えた後、990M付近で、稜線上で泊まることを想定して目いっぱい水を採る。水が涸れた後、左岸にあがって樹林の斜面を登って行き、高陽山北方尾根上にブナに囲まれた平坦な場所を見つけて幕場にした。

水流が細くなってきた源頭付近
なだらかな尾根にはブナ林が広がる

23日(雨のち曇)

朝方から降り始めた雨に打たれながらテントを撤収し、西へ向かう。適当に下降していくと、次第に尾根と谷とがはっきりしてくる。谷を進むとやがて窪に出て、水が流れ始める。地形図から想像する通り、何もない沢で、900M付近から2×2斜瀑、少し間をおいて6M-4Mの連瀑が懸っていただけで、640M付近で右岸に道がついていたので、この道を辿ることにする。道を下降していくと、途中で下方に熊を見かけたが、こちらの存在を知らせても意に介さずと言った感じだったので、そのまま下降を継続することにした。530M付近で左下方に林道が伸びてきていることを確認し、山道が藪っぽくなった所で林道に降りた。

馬取川源頭部
4M-6Mの滝を下降 滝らしい滝はここだけ
植林帯が見られuようになると道に出る

林道を進むと間もなくゲートがあり、その先で九十九折になっているところが標識と案内板が立っている万治峠入口だった。登山道を経由して約1時間20分で峠を越えて実川集落跡の駐車場に戻った。

大持場沢は、全体としては易しいうえに、7M、12M、18Mの美しい滝を懸けており、首都圏近郊なら間違いなくお薦めするが、遠路はるばる訪れてまで遡行する価値があるかというと、そうとも言えない。

 

同行者の記録

遡行図:大持場沢馬取川

山行最終日:2016年10月23日
メンバー:長島(L) 高森 匿名
山域: 飯豊連峰 阿賀野川
山行形態: 沢登り
コースタイム:
22日:駐車場(8:00)-入渓点(8:45)-550M付近(11:30/12:00)-720M二俣(14:00)-820M奥二俣(15:00)-990M付近(16:00)-高陽山北尾根幕場(16:45)
23日:高陽山北尾根幕場(7:55)-635M山道(9:50)-万治峠入口(10:30)-駐車場(11:50)
地形図:日出谷・飯里
報告者:長島