玉川 大滝沢

昨年に続いて、年度最後の飯豊の沢は、西俣ノ峰北方尾根を水源とする玉川左岸の支流を選んだ。昨年遡行した小滝沢の北隣にある、大滝沢を遡行した。地形図で見る限り、谷が比較的まっすぐであることと、等高線の密度の変化が一様なことから、それほど厳しい沢ではないと予想していたが、本流には見ごたえのあるゴルジュがあり、右俣(支流か?)に入ってからはスラブ壁に挟まれた狭い谷に滝が連続しており、なかなか厳しくも楽しい沢だった。

中田山崎の酒屋の向かい側の道路が広くなっているところに車を停めて、大滝沢へ向かって南へ歩く。大滝沢を渡る所には玉川中里の公民館があり、本流を渡る橋も架かっている。大滝沢の両岸にはともに道がついているが、右岸の道からアプローチすることにした。少し登って民家を過ぎると、送電線の点検路と山道に分かれる。山道の脇には水路があるので、水路の保守や取水調整のための道だと思われる。道は285M付近で大滝沢の谷幅が狭まり、少し北へ向かって曲がっていく辺りまで続いていた。

大滝沢右岸の道
途中から山道になる
285M付近入渓点

入渓した辺りは平凡な流れで、すぐに右岸に枝沢を分けている。右岸はスラブとなり、谷が右へと曲がっていくと、釜を持った5M滝が懸っている。釜に浸からない限り滝に取付くことはできないし、取付いたところで手がかりが少なく登れない可能性が高い。それ以前にこの時期に朝から釜に浸かった上にシャワーなんて浴びたくもないので、右岸から巻くことにする。滝を過ぎた辺りで沢身に向かってクライムダウンしていくと、途中のブッシュに古い残置シュリンゲがあった。少し河原を歩き、釜をへつって落ち込みを越えると、谷は左に曲がる。

釜を持った5M滝

曲がった先で両岸の壁が狭まり、狭く深いゴルジュとなるが谷底はゴーロで、雰囲気だけ味わいながら難なく通過する。100Mくらい進むと少し谷が広くなって圧迫感から解放される。緩く右に曲がると、二俣というか遡行対象の支流が出合っている。水量比はほぼ(1:1)だが、幾分真っ直ぐに伸びている左の本流の方が多い。本流は出合の先で再び幅を狭めて落込み(滝?)が続いており、最狭部の先には陽に照らされた明るいブッシュ混じりのスラブが見えている。

流れが右へ曲がっていくとスラブ壁が見えてくる
両岸共に切り立ったゴルジュ
本流は尚も同じようなゴルジュが続いていそう

右俣(支流)は出合に6Mの滝を懸け、さらに5M滝が続いている。出合の滝は左から小さく巻いて越え、次の5M滝は左寄りの壁を登るが、上部は岩がせり出すように積み重なっていて、安定したムーブを探るのにちょっと苦労した。左壁が階段状の5M2段を越えると、沢は左に屈曲して正面にはルンゼが入っている。屈曲した先は1.5M幅の壁間に2M滝が懸り、その頭上にはCSが空を遮っている。狭い壁の奥には落口が見えない直瀑が懸っていて登れそうもない。

右俣の出合に懸る滝
頭上にCSがある2M滝

少し戻ってルンゼを登り、左岸のリッジを登っていくと、直瀑は5Mくらいで、さらに10Mの滝が続いている。10M滝の上も降りるには急な草付スラブとなっており、さらに滝が続いているので、大高巻きを決め込んで一連の滝を巻いていく。10M滝の上に懸る三つの滝を過ぎたところで小尾根状を下降すると、幾分開けたところに降り立った。

二俣を振り返る
一気に高度を上げている
2MCSの上には滝が続いていた
足下は急峻なスラブ

流れは二分して右側に6M滝が懸っている。この6M滝を左から通り過ぎると、両岸のスラブ壁が接近している。登れない滝があると、巻くのは難儀しそうな雰囲気である。最初の二つの滝は越えられたが、次の二つは登れず左から小さく巻く。意外にあっさりと巻きルートに取付けたが、下降にはかなり慎重を要した。次の滝は右から簡単に巻くことができ、さらに二つの滝も問題なく越えたが、次の滝は水流を浴びないと登れそうもないので巻きルートを探ったが、巻きはかなりハイリスクになるので雨具を着て直登して越えた。

二分した流れの一端に懸る6M滝
左岸スラブ壁に沿う流れに懸る5M滝
ゴルジュ末端の3M滝

左に枝沢を分けて右へ曲がると、基部に蒲鉾形の洞穴を持った4M滝が懸る。滝はツルツルで難しそうなので左のブッシュ帯から巻いていくと、下降するには傾斜がきつくブッシュも少ない上に、少し先に登れそうもない8M滝が見えたので、8M滝の上まで大きく巻いていく。

基部に蒲鉾形の洞穴がある4M滝

沢身に戻って、ゴーロ状の谷を進むと、8M2段の滝が現れる。簡単に右から巻いて越えようとしたが、左岸を少し登ると滝の手前がルンゼ状に抉れていて下降できず、追い上げられる。さらに上流には谷幅いっぱいのCSがある滝が懸っており登れそうもないうえ、その先に懸る大きな滝も難しそうだ。地形図を見ると、前方の大きな滝を過ぎた辺りが左岸尾根と沢との標高差が無くなる720M付近のようなので、ブッシュ混じりのスラブを登って尾根に出て720M地点へ向かった。720M付近は沢との標高差がほとんどなくなり、ブッシュを伝って5M程降りると、沢身に立つことができた。

8M2段の滝
8M2段の滝の上に続いていた滝
720M付近へ続く小尾根

沢に戻って遡行を再開すると、すぐに(1:1)で左に枝沢を分ける。地形図から予測するよりも水量が多い枝沢だ。三つの滝を越え、2M滝を左から小さく巻くと、(1:2)で右に枝沢を分け、さらに進むと(1:3)で水流が分かれる。正面が本流のように見えたが、右壁を流下する5M滝が本流である。少しボサが煩くなってくるが、窪は稜線付近まで続いており、ほとんど藪漕ぎなしに稜線に出た。

5Mほどブッシュを掴んで沢に下降
下降点以降は5Mくらいまでの滝がいくつか懸っている
尾根が近くなってきた

灌木と笹の藪に覆われた稜線を北へ向かって30M程行くと、草が刈られた大境山山頂の小さな広場に出た。大境山からは登山道を辿って中田山崎まで1時間15分で降った。

尾根上は藪が濃くて少し苦労した
大境山山頂

 

遡行図

 

天候:晴

山行最終日:2016年11月5日
メンバー:長島
山域: 飯豊連峰 荒川
山行形態: 沢登り
コースタイム:
中田山崎(7:40)-玉川中里公民館前(7:55)-大滝沢285M付近(8:30)-360M二俣(9:10)-610M付近(11:30)-720M付近(12:25)-大境山(13:30)-中田山崎(14:45)
地形図:長者原・小国
報告者:長島