北股川(上流部)

11日から15日にかけて北股川を出合から遡行したが、途中アクシデントもあり日数が足りなくなったのと、地蔵カルを過ぎた雪渓から高巻きを開始した後、崩壊最中の雪渓を足下に見て下降を断念したため、沢には戻らず終いになった。
今回は、遡行できなかった上流部を緩い日程でゆっくりと見て歩くつもりで、当初の鮎倉沢の計画を変更して、二ノ峰と門内岳間の最低鞍部からアプローチして、三郎沢出合より上流部を遡下行した。

18日(晴のち曇)

初日は梶川尾根を登って門内小屋へ行くだけの予定なので、泊まっていた新発田のホテルで朝食を摂ってから、かなり遅めの出発をする。飯豊山荘の奥の駐車場に着いたのは9:50くらいだったが、それからパッキングを始めて、10:30頃に登り始める。

梶川尾根経由で門内小屋を目指す

登り始めが急登なのは、飯豊の登山道のお決まりのパターンだが、このルートは一般道としても危険個所はなく、なかなか良いルートだ。梶川峰に至ると扇ノ地紙まで草原の道が続き、晴れていれば最高の展望が得られる。また、五郎清水が冷たくて美味い。

梅花皮雪渓
梅花皮大滝
扇ノ地紙が見えてくる辺りから開けてなだらかになる

門内小屋では、17日から高桑さんが管理人をやっていた。こちらが逍遙の会員であることを明かすと、晩の酒盛りに誘ってくれた。夕食後、高桑さんの知り合い二名と、そのうちの一名の息子さんと酒を酌み交わし、山の話に興じた。

門内小屋が見えてきた

この日はテント泊で、静かな夜を過ごした。

19日(晴)

食事を済ませて、管理人に挨拶してから、予定のルートに着く。門内岳直下は笹薮だが、途中から仮払いされた踏跡が続いているので、コルまでは苦労しない。門内岳直下では、少し北股岳方面に降ってから草原を辿って行った方がさらに快適かもしれない。

二ノ峰を正面に見上げる最低鞍部から、短い枝沢を下降する。この沢は、見立てた通り滝ひとつなく、出合までゴーロの沢で、下降向きである。途中、右岸に湧水があったので、飲用に水を汲んでおく。
出合いには雪渓が架かり、同じところで北股川に注ぐ門内岳の肩から流下する枝沢は、出合に15Mの滝を懸け、その上にも滝を連ねている。この枝沢の渓相は、先日尾根から見えていた通りだ。

出合いから少し下った所に、ロープと食料以外の荷物をデポして、三郎沢出合付近へ向かって下降する。谷はやや開けたV字のゴルジュが続くが、比較的左岸が傾斜が緩い所が多く、バンドを利用できる。三郎沢出合まで100Mくらいのところまで下降したが、8M直瀑の基部から狭い流れ出しに水流を集める滝が深い釜に向かって落ち込んでおり、恐らくこれが登れず大高巻きになりそうなので、8M滝を懸垂下降したところで引き返すことにした。

三郎沢出合の上流100Mくらいのところに懸る8M滝

8M滝の上で引き返してもよかったが、右壁を快適に登れそうだったので、懸垂下降して右壁に取付いてみた。見た目通り、適当な間隔でガバがあり、立ってはいるものの簡単に登れた。この滝の下流部には、三郎沢出合までに小さな雪渓一つと、2~3の滝と落込みがあるようだった。

三郎沢出合方面
8M滝基部からの景色

8M滝の上には、釜を持った小滝が続いており、右から簡単に登れる。青と白の二色の二色の岩盤のナメを過ぎると、6M、3Mといずれも二条の滝が続く。右壁を抉ったような釜には6Mのナメ滝が流れ込んでいる。この辺りまでは、谷幅が広く簡単に滝の脇を通過できる。

6M2条の滝 上部に3M2条が続く

谷幅が3Mくらいに狭まると、左に細い枝沢を分けて、滝のない流れとなる。正面を塞ぐような黒っぽい壁が見えてくると、3Mのナメ滝と岩盤を抉った樋状の流れを過ぎる。左壁が深く抉られたような筒状の壁となって切り立ち、10M以上の垂壁の上から宙に向かって水流が噴射され、大きな釜に落下している。左岸のスラブから遠巻きに巻いていくと、噴射点より上がナメ滝となっており、全部で20Mくらいの落差があることが窺える。

水流が描く放物線が美しい20M滝

左岸が緩やかに開けて、スラブ滝を連ねる枝沢を分け、本流には幅広の雪渓が架かっている。右岸から雪渓に乗って、上流側は左岸に渡って、スラブのバンドに乗り移る。上流側で雪渓が切れているところに懸る10Mを見下ろしながらバンドを進む。

雪渓に覆われる
雪渓の上流端

4M滝を過ぎ、8M滝を右岸から巻くように越える。8M滝基部付近の右側壁には、お地蔵様を祀ったような窪みがある。谷は河原状になるが、下流側が崩壊して複雑な形状をした雪渓が架かっており、谷を歩く気にはならない。スノーブロックを横目に左壁沿いにガレを登ると、枝沢の棚に乗りあがる。棚から続くバンドを雪渓の側面を見ながら進み、雪渓が右岸に接したところで、雪渓に乗り移る。この雪渓も上流側では左岸のバンドに降りた。

基部にお地蔵様を祀ったような穴がある滝

上流側に散乱したブロックの脇の右岸の壁からは、水がこんこんと湧き出ていた。平凡な河原状になって、一つ小滝を過ぎると、荷物をデポした出合に着いた。

左壁の湧水

雪渓を潜り抜けて上流へ向かう。巨石が転々としたゴーロ帯となって、左へ曲がっていくと、滝から放出された白い水流が見えてくる。近づいていくと8M2条の滝で、左壁をへつるように登る。滝上の左岸には樹林帯まで続く草付リッジが降りてきている。

荒れた感じのゴーロと8M滝

次の大きなCSの5M滝は、10M程手前で右岸にリッジ状に突き出た岩の左側の草付とのコンタクトラインを登り、草付を下降して越える。降り立ったところからは、やや開けた河原となり、やがて巨石ゴーロのゴルジュとなる。

明るい巨石のゴーロ

7M滝を左岸の大岩の裏を迂回するように越えると、少し左に曲がて左に傾いたゴルジュとなる。右岸にはスラブ壁、左岸にはハングして覆いかぶさった壁が続く。小滝二つを過ぎると、奥行き6Mくらいの深場となり、左壁沿いを泳いで、流れ込みの1.5MCSと右壁の間に入り込む。この後、小釜を二つ越えると、ゴルジュが終わる。

7M滝
左に傾いたようなゴルジュ
左壁沿いを泳いだ深場

ゴルジュを抜けると、10M2条の滝が水流で「ハ」の字を描いている。右岸のガレルンゼを登って、ルンゼと本流を隔てるリッジを越えたが、少し登りすぎたようだ。滝の落口くらいの高さからトラバース気味に行った方が良かったかもしれない。だいぶ谷が開けてきて、この後の3M、8Mは滝に取付かずに越える。ナメを歩き、1.5Mの緩い滝を過ぎると、2M滝、ナメ滝を連ねる巾着沢が出合う。少し早いが、翌日の行程の基点にはベストな場所なので、出合付近の河原を整地してテントを張って、この日の遡行を終了した。

ハの字の形をした2条の10M滝
3M滝
巾着沢出合の滝
出合付近の河原の幕場
河原の夕暮れ

20日(小雨のち曇)

前日同様に晴天になるものと思っていたが、朝から小雨で少々気分が萎える。この日は、稜線までの流程が見通せるところまで巾着沢を往復した後、財布沢を詰めて、北股岳から門内小屋へ戻る予定だ。

先ずは、テント場から草付を登って、出合の滝の上に出て、巾着沢をナメ滝から遡行する。ナメ滝は傾斜が緩いので、ノーハンドで水流右側を登る。下からはブッシュが門のように茂っていて見えなかったが、すぐに4M、6M、6Mの三段の滝が続いており、左側を登っていく。

8×20ナメ滝
3連瀑

草付に挟まれた狭い流れの奥に8M滝が懸っており、手前から左壁を斜上して取付こうとしたが、滝の側壁のバンドは外傾が強いので引き返す。20Mくらい戻って、左岸の急な草付から笹薮をトラバースして滝上に出た。

8M滝

左壁が急な草付となって河原が続き、正面奥にガレた斜面が見えてくると、右壁に18M2段の滝が懸る。この滝は左右どちらからも登れるが、往路は右を登り、復路では左をクライムダウンした。間髪入れずに4Mと3Mが続くが、問題なく登れる。次の8Mは手がかり乏しく、左岸の草付に隠れた小さなルンゼから巻き、続く6Mも登れないので、下降点から登り返して、ブッシュにロープを固定してゴボウで滝上に降りた。ロープをFIXしたまま、上流へ向かう。

18M2段の滝
8M滝

一旦河原となるが、すぐに岩壁に挟まれた連瀑帯となる。6M、小滝、7Mと連続する下部は、右側のスラブっぽい斜上バンドを登り、上部の2MCSと6Mは左岸が開けていたので、簡単に越えた。次の8M滝は、左から右へと傾いた棚を樋状に抉って流れており、一番右側の水流に沿って登る。

岩壁に挟まれた連瀑
傾いた棚を樋状に抉る8M滝

棚田をなすような渓相に、いくつかの滝が懸るが、特に問題になる滝はなく、1650M付近の二俣に至る。水量比は(1:10)で、左俣は谷の規模の割には細々としか水が流れていない。右俣に懸る4M滝を登ると、その先は源頭の渓相となる。ガスがかかって先は見通せないが、このまま草原の中を緩やかに流れて稜線付近に消えそうな雰囲気なので、ここで遡行を打ち切って引き返した。

次第に棚田状の岩盤のナメとなっていく
地形の上では二俣のようだが水量は(1:10)
稜線に向かって消えていきそうな流れ

地形図で見た巾着沢は、谷が浅く等高線の間隔も開いているので、ナメか河原主体の穏やかな沢を想像していたが、意外にも規模の割に多くの滝を懸ける沢だった。

幕場に向かって巾着沢を下降

テント場に戻って一服して、荷物をまとめた後、財布沢を遡行する。平凡な河原を行くと、右に(2:1)で枝沢を分ける。右壁が立ってきて2M2条の滝が懸る。クランク状に屈曲して3M、4×3CS、1.5MCSと続き、さらに3×4、5Mの滝が懸るがいずれも問題になる滝はない。

財布沢
2M2条の滝
小規模な滝が続く

開けた河原となって、緩やかに右へ曲がっていくと、かろうじて左右繋がってブリッジをなした雪渓が残り、その奥に途切れて左右に雪壁が続く。少し側壁が急になって左に曲がると、4M「く」の字滝が懸り、(1:3)で左に顕著な枝沢を分ける。本流には6M2段の滝が懸り、その基部は浴槽のような釜になっている。晴れていれば、水浴びするのに良さそうだ。

(1:3)枝沢出合 右本流に6M2段の滝が懸る
6M2段滝の基部には浴槽のような釜がある

短い雪渓が残る河原を過ぎると、左に傾いたゴルジュになって、5×6、2Mの滝が懸るが、いずれもゴーロ滝で問題なく越える。右岸スラブ壁の裏側に回り込むように谷が曲がって、3M滝を越えると、両岸ともに草付が谷まで届いた明るい河原状の流れとなる。次の6M滝は、右側手前の側壁から水が湧き出ている。この滝は左壁のリッジ状のさらに左のチムニー状のところを登る。小滝を越えて、緩やかになった流れを行くと、(1:3)で左に枝沢を分ける。

左に傾いた低い壁のゴルジュ
河原が広がる渓相
右壁から水が湧き出ている6M滝

10×6の苔生した滝を越え、小滝と苔生したナメを過ぎると、赤っぽい岩盤が目につくようになる。今度は(1:2)で、枝沢と本流が似たような滝となって並んでいる。本流の4M滝を登ると、さらに同じような6Mの滝が二つ続く。これらの滝を越えると、草原を流れる浅い窪状の沢となり、湧水帯で水流が消える。さらに沢型を詰めて行くと、右手に登山道からもよく見える雪田がある北股岳西尾根に突き当たる。尾根上は草原が続き、北股岳直下でわずかに笹薮を漕ぐと、山頂からおういんの尾根の登山道を10M程降ったところに出た。

10×6苔生した滝
源頭付近6M滝(たぶん)
草原の中の浅い窪の源頭部

財布沢は巾着沢よりも谷が深く刻まれているので、険しい沢を想像していたが、雪渓がなければ、むしろ登りやすい沢と言える。しかし、雪渓が残りやすそうなので、残雪量次第だが、巾着沢よりも難しいことが多いのかもしれない。詰め上がった枝尾根が草原だったのは助かった。この距離がずっと藪漕ぎだったら、あと1時間はかかっていただろう。
北股岳から門内小屋へ戻り、小屋泊にするかテントを張るか決めかねて、小屋でゴロゴロしていたが、午後になって風が強くなってきたので、小屋に泊まることにした。

おういんの尾根から派生する尾根に出た
北股岳山頂

この日も管理棟にお邪魔して、酒をご馳走になった。

21日(晴)

前の日の深夜に風がやんで、穏やかに晴れた朝を迎えた。お昼に会津で蕎麦を食べて帰ろうと思い、早めに小屋を出る。往路を辿って駐車場に戻った。冗長なところが少ない道だけに、降りでは思った以上に早く下山できた。

 

遡行図

山行最終日:2016年8月21日
メンバー:長島
山域: 飯豊連峰 加治川
山行形態: 沢登り
コースタイム:
18日:梶川尾根登山口(10:30)-湯沢峰(11:50)-梶川峰(14:25)-扇ノ地紙(15:00)-門内小屋(15:20)
19日:門内小屋(7:35)-二ツ峰手前コル(8:30)-北股川1280M屈曲部(9:20)-1120M付近8M滝(10:35)-北股川1280M屈曲部(13:00)-巾着沢出合(15:00)
20日:巾着沢出合(5:40)-巾着沢1650M二俣(7:40)-巾着沢出合(8:30/9:25)-1750M付近(11:00)-北股岳西尾根(11:50)-北股岳(12:15)-門内小屋(13:00)
21日:門内小屋(5:20)-梶川峰(5:55)-湯沢峰(7:05)-梶川尾根登山口(7:50)
地形図:二王子岳・飯豊山
報告者:長島