10日:
岩倉集落で大川入沢(昭文社エリアマップでは小川入川)沿道に入る。民家もあって、生活道路となっているが、100Mほどで廃屋となった最終民家があり、そこから先は未舗装の悪路に変わる。轍が深く、車の底を擦るところもあった。
堰堤手前の駐車スペースに車を停めて歩き出す。悪路ではあるが轍の道は堰堤上まで続き、広場に轍の主の作業車両がシートを被せて停められていた。人が歩ける程度の踏跡はあるが、口黒沢手前で藪に消え、沢に降りる。
沢もボサの張り出しが多く歩き難い。全くの藪沢である。中津川峠が近くなると、青テープの目印があった。峠から少し浅股沢川に降った所にも赤テープと青テープの目印があったが、踏跡は認められない。何もない沢を降っていくと、互いに4M程度の滝を懸けて右岸からの流れと合流する。そこから一投足で出合に出た。
浅股沢も徒渉しながら歩くだけである。やがて右岸が草原となると、明瞭な道がついているのを見つけた。間を開けて続く二つの堰堤のうち、下流側の堰堤を渡るとすぐに本流に懸る橋を渡って、林道に出た。林道を本流上流方面へ辿って、終点からは廃道となった登山道を辿って、黒松沢出合で入渓した。
黒松沢出合付近は段丘にススキが茂る河原である。上流へ向かうと森の中に入っていくが、まだ河原が続いている。赤石沢を(1:1)で分けた後、480M付近に来ると少しゴルジュっぽくなってくる。顕著な滝はなく、釜を持った落込みがある程度で、濡れたくなければ、巻きも容易なところが多い。
標高500M付近で、入口と出口に深場を持ったゴルジュを右から巻くと、ゴルジュ出口に懸る2×4のナメ滝上に出た。右壁にはFIXロープがぶら下がっている。550M付近に幕場適地の河原があったが、まだ早過ぎるので、見送って先へ進む。ささのさ沢を過ぎると、若干落差のある滝が出てくる。泳ぎを嫌って、釜を持った2M滝は左から小さく巻いて、懸垂で滝上に降りたくらいで、あとは難なく越えられる。
標高655M付近の左岸の小さな河原を整地してテントを張った。この沢は幕場適地が少ない。
11日:
幕場のすぐ先には3×6Mが懸るが、この滝は先日薪集めに登り降りしている簡単な滝だ。その後も3M、5M、3Mと難なく越えていくと、しんざおとし沢と川前滝沢が(1:1)で、互いに3M滝を懸けて出合う。川前滝沢へ進み、出合の3M、続く3M、6Mの滝を越えた所で、雨が強くなってきたため、ルート変更をして大又沢から赤石沢へ向かうことにした。先の6M滝は初級者にはちょっと難しかったかもしれない。支点が乏しいので、戻ることはせずに、右岸を登ってしんざおとし沢へトラバースした。
ルンゼと灌木帯を経て樹林帯に入って、しんざおとし沢へ下降していく。最後は懸垂で谷に降りたが、運悪く滝下へ降りてしまった。単独なら問題ないが、登攀力に欠けるメンバーがいるときは、できるなら滝上に降りたいものだ。
しばらくは顕著な滝がなく、急傾斜のゴーロの中に、大きな落込みだか滝だか判別し難いようなギャップからなる連瀑があるといった感じである。
1000M付近に来ると、6Mの直瀑が懸る。少し戻ってから巻くか、滝付近から巻くか、思案の後、滝付近の岩の上のバンドをトラバースして右岸の樹林帯に取付いた。大きな倒木が立て架かった2M、3Mの滝を越えたところで、後続の梶原さんが登りかけたとき、倒木が滑り落ちた。梶原さんは、紙一重で倒木と1Mくらいの岩の下敷きにならずに済んだが、膝に擦り傷と打撲を負ったようだ。自分も倒木に左脚の親指を踏みつけられてしまったが、骨折は免れた。
少し進んだところで、先に三つほど滝が認められたが、左岸の樹林帯を登って大丸森山と小丸森山の間の尾根に出た。
尾根から急なブッシュ帯を下降して、赤石沢の支流、つつの倉沢を目指す。何てことない下降だが、高森さんが怖がって後ろ向きに下降しようとするので、不安定な上に時間がかかってしまった。この頃から強い雨が降り始め、早く幕場を定めたい気持ちと、安全着実にメンバーを下降させようという気持ちがせめぎ合う。
沢は平凡で、難所もないが、遅々として進まないため、次第に暗くなってくる。滝川同様につつの倉沢も幕場適地が少なく、出合付近に水没しそうな河原を見つけ、かろうじてテントを張った。最後はヘッデンを灯しての下降だったが、ようやく一息つくことができた。
一時期は、増水してテント際まで水が押し寄せたが、夜間は降ったりやんだりになり、次第に快方に向かったので、事なきを得た。
12日:
幕場から下降を始めると、間もなく出合だった。滝川と赤石沢の出合では(1:1)のように見えたが、上流域では赤石沢の方が水量が多い。2M~3M程度の滝が断続するが、釜も滝川より大きく、滝の幅も広くて、見ごたえがある。ただし、難しい滝はなく、いずれも簡単に登れるか、巻くことができた。滝場を過ぎて開けてくると、権現沢といぼの沢が出合う二俣となる。
権現沢に入ると、間もなく左岸に2M滝を懸ける枝沢を分ける。本流には、少し左に折れて壁に囲まれるように8M滝が懸っている。右岸から簡単に巻けるが、蔓草が絡まって通過に苦労した。滝上に出ると、ゴーロ帯となって、滝もゴーロの中に埋もれた滝らしくないものが多い。右岸から支流が流れ込む地点で、その都度時刻とそれまでの遡行時間を考慮し、いずれに進むか判断する。
(1:1)の奥の二俣の手前でようやく滝らしい滝が出てくるが、左岸の草付から巻いた。続く6Mは簡単なので登る。少し集中時刻には間に合わないかもしれないが、右俣(本流)へ進むことにする。ゴーロが続き、その間に8Mをはじめ三つ程の滝が懸る程度で、順調に高度を上げていく。源頭近くなると、8×10、急傾斜のナメと続き、最後は草原の中に窪が消えた。草原の最上部からブッシュ帯への取付きが急傾斜で少し厳しい。ブッシュを掻き分けると、すぐに登山道に出た。
高森さんは急傾斜のブッシュ帯への取付きに苦労していたが、ブッシュ帯を処理する技能も、自分で工夫しなければ、いくら言葉で言っても会得できないものだ。ここでは、敢えて高森さんには手を貸さなかった。選択肢は、道具を使うか、体術を会得するか、ルートを工夫するかのいずれかだ。自分なりの方法を見つけてもらいたい。
10日:大川入沢(小川入沢)沿道(8:15)-中津川峠(9:30)-浅股沢:出合(10:15)-右岸道(11:00)-黒松沢出合入渓点(11:50)-ささのさ沢出合(14:50)-標高655M付近(15:30)
11日:標高655M付近(7:15)-しんざおとし沢(9:30)-6M滝上(12:00)-稜線(14:00)-つつの倉沢(15:10)-出合付近幕場(17:45)
12日:出合付近幕場(7:00)-二俣(7:50)-1135M奥の二俣(9:45)-地蔵岳(11:20/11:45)-大日杉(12:55)